最新記事

カタールW杯

W杯スタジアムはタリバンの協力を得て建設されていた

2022年12月7日(水)16時00分
青葉やまと

スタジアム建設はタリバンにとって「金のガチョウ」だった......? REUTERS/Molly Darlington

<アフガニスタンを実効支配する武装勢力・タリバンの幹部らが、W杯カタール大会関連の整備事業で莫大な収益を上げていたという>

数々のドラマを生んだサッカーW杯カタール大会。熱狂の舞台となっているそのスタジアムに、黒い疑惑が囁かれている。

建設プロジェクトにタリバンが有償で協力しており、同組織にとってスタジアムの建設は「金のガチョウ」と呼ばれるまでの太い資金源になっていたという。英紙テレグラフが報じた。

カタール大会では7つのスタジアムが新造されたほか、空港やホテルなどインフラ整備が急ピッチで進められてきた。記事によるとタリバンは、大会側からW杯関連の建設を請け負った正規の企業に対し、重機などの機械・設備をリースおよび販売していた。これによって得られた利益は莫大な額にのぼるという。

ドーハ在住歴のある情報筋はテレグラフ紙に対し、「タリバンのメンバーの一部はひとりあたり6台から10台の重機をドーハに所有しており、最大で月あたり1万ポンド(約170万円)ほど稼いでいた」と証言している。

このペースでの収入が継続していたと仮定するならば、過去10年間の合計では、メンバーひとりあたり最大2億円相当の収入を得ていた計算となる。この情報筋、「タリバンはW杯の建設に多額を投資しており、大会は金のガチョウだった」と表現している。

和平交渉で得た協力金を再投資

カタールでの大会開催が決定して以来、タリバンは10年間にわたり、建設用重機に集中的に投資してきた模様だ。

重機購入の資金源となったのは、和平交渉の一環としてカタール当局から支払われていた現金だ。当局は国連およびアメリカの承認のもと、西側との和平交渉促進策の一環としてタリバン側に現金を支給していた。ドーハにあるタリバン事務所の構成員に対し、月々数千ポンドが供与されていたとみられる。

在ドーハ・アフガニスタン大使館の元高官はテレグラフ紙に対し、「タリバンの交渉班と政治担当官がカタール政府から高額の報酬を得ており、彼らがこの報酬をW杯用の建設機械に投資していることは、在ドーハ・アフガニスタン大使館では公然の秘密だった」と語っている。これとは別に2人のタリバン高官筋も、カタール政府から受け取った資金を重機購入に充てたことを認めた。

大会の建設事業には相当な額が投資されており、資金は国外からも調達されていたようだ。タリバン内で最も強硬な派閥とされるハッカーニ・ネットワークは、カタール以外のアラブ諸国のアフガニスタン人たちに投資を呼びかけ、それらを含めてW杯関連の収益事業の元手としていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中