最新記事

中国

感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか──モスクワ便り

2020年5月15日(金)08時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

二つの目の選択肢は国連にある国際司法裁判所に訴える方法で、これは国連憲章第94条などに規定されている。94条の1によれば、「各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する」となっているので、もちろん「国家が国家を訴えることは可能」である。

もっとも、ハーグの仲裁裁判所と違って被告側に相当する国(今の場合は中国)が「受けて立つ」と表明しなければ、そもそも裁判が成り立たない。

万一にも中国が「受けて立つ」と意思表明し、裁判が進む場合、94条の2には「事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。理事会は、必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、又はとるべき措置を決定することができる」とある。すなわち「従わない場合は国連の安全保障理事会に訴えることができる」のである。

したがって現在のコロナの状況で言うならば、アメリカなど8ヵ国が「国家」として「中国」を訴えて裁判が進行し(判決が出ても)中国が従わない場合は、安保理に訴えることができるので、オランダ・ハーグと違い「強制力」を持っているわけだ。

ところが、国連憲章第27条の3には「その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない」とある。

となると、気になるのは安保理常任理事国のロシアの態度である。

「モスクワの友人」を取材:感染者が急増しているロシアはどう対応するか?

そこで早速、プーチン大統領の側近らとも接触のある「モスクワの友人」にインタビューを試みた。

遠藤:コロナは全人類に未曽有の災禍をもたらし、ロシアも最近では感染者が急増していますが、さすがに蜜月関係にあるプーチンも習近平を恨み、西側諸国が起こしている訴訟の輪に加わるという動きはありませんか?それとも原油安が進む中、石油を買ってくれる国として蜜月関係は崩れませんか?ここが崩れるとアフターコロナのパワーバランスに影響を与えると思うのですが...。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、11月は前月比0.1%減 予算案控え

ワールド

中国、米国防権限法の対中条項に強い不満 実施見送り

ビジネス

英財政赤字、11月は市場予想以上の規模に

ビジネス

ニデック、永守氏が19日付で代表取締役を辞任 名誉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中