最新記事

感染症

イタリアが「欧州の武漢」に なぜ感染は急速に広がったのか

2020年3月5日(木)11時28分

感染拡大の理由

イタリア国民は、自国がなぜ「欧州の武漢」になってしまったのか、理由を知りたがっている。イタリアで最初の症例が発見されたのは1月末である。死に至る場合もある感染症の震源地となった武漢からの中国人観光客2人がイタリア旅行中に発症したのだ。

この夫妻は直ちに隔離され、接触のあった人は全員ウイルス検査を受けた。イタリア政府はさらなる感染を防止するため、他の欧州諸国に先駆けて、中国との直行便を発着ともすべて禁止した。上述の2人の中国人が他の誰かにウイルスを感染させたとは考えられていない。

ジュゼッペ・コンテ首相は1月31日、記者団に対し、「イタリアが実施した感染予防体制は、欧州で最も厳しいものだ」と自信ありげに語った。

だがその自信は裏切られた。

2月21日、ロンバルディア州は、ミラノ南東60キロにあるコドニョ出身の38歳のイタリア人男性が新型ウイルス陽性と診断されたと発表した(「マッティア」という名だけが発表されている)。それから1週間以内に888人の感染が確認され、そのうち21人が死亡した。

複数の新型ウイルス肺炎患者の治療に当たっているミラノのサッコ病院で感染症担当部門を率いるマッシモ・ガッリ氏は、「我が国は、最も思い切った迅速な予防措置を採った国だと考えられていた」と話す。だが同氏は、「国内感染者1号」とされるコドニョ出身の「マッティア」氏が発症するよりだいぶ前から始まっていたのではないか、と言う。

「患者ゼロ号」

地元当局によれば、この感染症は100人に2人の割合で肺炎など生命に関わる合併症にかかるが、無症状のまま終る人もいるため、自覚のないまま多数の人に感染させる可能性のある「ステルス・キラー」を生んでしまう。

現地当局者によれば、「マッティア」氏が2月18日にコドニョの病院を訪れた時点では、中国への渡航歴がなかったため、その症状については何の警戒もしなかった、という。

だが、その結果は深刻だった。

地元の保健当局によれば、来院した日を救急処置室で他の患者に囲まれて過ごした後、自宅に戻ることを決めた。だが症状は悪化し、翌日、何の感染予防措置も施さないまま病院に戻った。

ウイルス感染を診断されたのは2月20日夜。そのときまでに5人の医療従事者と、少なくとも1人の同室患者、そして妊娠中の妻と友人1人が感染した。彼らもまた、隔離される前にウイルスを拡散させた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は6日ぶり反発、米欧対立への過度な警戒が緩

ビジネス

中道改革連合が発足、野田共同代表「食料品消費税ゼロ

ビジネス

インド中銀、国営銀通じてドル売りのもよう=トレーダ

ビジネス

ノルウェー・テレノール、タイ通信大手株を39億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中