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北京、動くか 香港デモ

2019年11月18日(月)12時05分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

近い内に何かが起きると予感させた。

おそらく、習近平の指示の下で香港政府と香港警察が「本格的に」デモ隊を鎮圧するか、あるいは以下に述べるアメリカ側のリアクションを考慮しながら、何らかの新たな行動に出るだろうことが予測されるのである。

このタイミングを選んだ理由

このタイミングを選んだ理由としては、二つ考えられる。

一つ目は、11月14日に米議会の超党派諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会(USCC=U.S.-China Economic AND Security Review Commission)が、「2019年、年次報告書」(2019 Annual Report)を発表したからだ。

報告書は「アメリカは中国からのリスク増大に直面している」として、「ハイテク企業のサプライチェーンに対する脅威や中国のインド太平洋地域における軍備拡大、対北朝鮮制裁を弱める中国の取り組み」などを列挙しているが、何よりも香港情勢に関して勧告を出していることに中国は敏感に反応している。

報告書では「中国の軍や武装警察が抗議デモの鎮圧に投入された場合は、香港に対する経済分野での優遇措置を停止する法律を制定するよう」勧告しているのである。

これは即ち、二つ目のタイミングの原因と軌を一にするもので、米議会下院で10月15日に、超党派による「香港人権民主法案」が全会一致で可決されたが、この法案を上院で可決するのをトランプ大統領は延ばし、習近平との米中首脳会談におけるディールとして使おうとしていた。

10月28日付のコラム「ペンス米副大統領演説と中国の反応を読み解く」で述べたペンス副大統領の演説にもあったように(このコラムの「7」)、本来ならチリでAPECが開催されることになっており、その会議で米中首脳会談を行なおうとしていたのである。それまで上院では審議しないようにしておいて、習近平から譲歩を引き出すためのディールに使おうとしていた。

ところがチリの治安が回復しないことからAPECが流れたため、米中首脳会談の場で使えなくなったので、早めに上院に上げて採決しようという動きが出てきた。その後押しをしたのが、この「2019年、年次報告書」だ。

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