最新記事

経済制裁

北朝鮮、4000人が働く世界最大級の美術工房 「アート」で外貨獲得へ

2017年10月12日(木)18時45分

北朝鮮のプロパガンダポスターを見せるギャラリー責任者。「核兵器なき新世界に向けて!」とある。ソウルで8月撮影(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)

ランニングシャツとズボンを身に着けた北朝鮮人のアーティストたちが、大きな窓の下に座り、カンバスを枠に固定したり、のどかな田園風景をパソコンから写し取ったりする作業に集中している。その中の1人は、ヘッドフォンを着けて、走る馬の群れをカンバスに描いていた。

ここにいる9人の画家は、北朝鮮最大の美術制作会社、万寿台創作社から、中朝国境沿いにある中国遼寧省の丹東に派遣されている。数千人程度が存在するという北朝鮮アーティストの一部は、国境沿いに多数あるこうしたスタジオに滞在して、増加する作品需要に応えている。

「中国人はアート作品の収集を始めている。北朝鮮の作品は、簡単に入手できて値段も安い」と、韓国文化観光研究院のPark Young-jeong氏はいう。

近年では、西側各国が北朝鮮の核・ミサイル実験に対する制裁措置を着々と履行するなかで、万寿台創作社などの美術スタジオは、同国が外貨を獲得するうえで、より重要な役割を担うようになった。北朝鮮は、鉱物や金融、武器の不正取引で長年罰せられてきたが、芸術は、相互理解のためのチャンネルだと見られてきた。

だがそれは変わりつつある。

万寿台創作社は、北朝鮮政府が経営。世界指導者の像からプロパガンダのポスター、刺繍作品まで、幅広く制作している。また、アフリカの15か国以上の国でモニュメントや像を建設したことが、国連の制裁関連報告書で確認されている。

2月に出されたこの報告書によると、万寿台創作の一部門である万寿台海外開発会社は、北朝鮮が他国と軍事関連の契約を結ぶ際に経由するフロント企業だ。同社は、巨大な像だけでなく、ナミビアの軍需工場や基地などの軍事施設も建設したと、報告書は指摘している。

北朝鮮のジュネーブ国連代表部の外交官は、万寿台が武器製造資金とは全く関係がないと述べた。万寿台創作社に連絡を取ることはできなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中