最新記事

アメリカ社会

衝撃の人気ドラマが連鎖自殺を引き起こす?

2017年8月21日(月)11時00分
マックス・カトナー

高校生が主人公の『13の理由』はヒットを飛ばしているが 13 Reasons Why Official Trailer/Netflix/YOUTUBE

<ネットフリックスのドラマ『13の理由』が大ヒット。自殺の話題がメディアをにぎわすことの悪影響は>

誰かの自殺がメディアで話題になると、それを機に悩んでいる人が助けを求めたり、他人の自殺の兆候に目を配る人が増えるという。一方でリスクもある。連鎖自殺の発生だ。

現実のものであれ架空のものであれ自殺についての話がメディアにあふれれば、連鎖のリスクは増殖する。最近のアメリカがまさにそうだ。

4月中旬、74歳の男性を殺害する様子をフェイスブックにライブ配信して指名手配されていたスティーブ・スティーブンズ(37)が、ペンシルベニア州で警察に追跡されている最中に銃で自殺。翌日には、殺人罪で終身刑に服していた元NFL選手アーロン・ヘルナンデス(27)が、刑務所で首つり自殺した。

そして、3月末に放映が始まったネットフリックスのオリジナルドラマ『13の理由』。自殺した女子高生が、死を選んだ理由を理解してもらうため同級生宛てに7本のカセットテープを遺す物語だ。若者を中心にヒットしているが、自殺をロマンチックなもの、実行可能な選択肢として描いているとの批判も大きい。

【参考記事】シャーロックとワトソンの名探偵コンビ、ドラマは衝撃の第4章へ(ネタばれ注意)

アメリカの自殺率は約30年で最も高いレベルにある。米疾病対策センター(CDC)の最新データ(14年)によれば、自殺は10~34歳のアメリカ人の死因の2番目。35~54歳では4番目、55~64歳では8番目だ。

メディアが自殺やその後の影響についてセンセーショナルに報じたり、自殺方法を具体的に説明したりすると、自殺を考えている人々は承認を与えられたと感じるようだ。一方、抑制的な報道なら、自ら命を絶つ衝動にブレーキをかけられる。

全米自殺防止財団の最高医学責任者クリスティン・ムーティエは、ニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンが94年に自殺したとき、周辺地域の自殺率が下がった例を挙げる。

「メディアでの扱いはほぼ適切だった」と、コバーンの自殺に関する96年の調査には書かれている。「全体的にこんなメッセージだった。『偉大なアーティスト、偉大な音楽......ばかげた行動。やめたほうがいい。助けを求めてここに連絡しよう』」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 3
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 8
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    中国人爆買いが転機、今後は「売り手化」のリスク...…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中