最新記事

米ロ関係

トランプ大統領、対ロ制裁強化法案に署名 ロシアは通商戦争と反発

2017年8月3日(木)08時21分

8月2日、トランプ米大統領は、ロシアに対する制裁を強化する法案に署名した。同法案は7月27日に上院本会議でほぼ全会一致で可決していた。写真は2日ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ米大統領は2日、ロシアに対する制裁を強化する法案に署名した。同法案は7月27日に上院本会議でほぼ全会一致で可決していた。

ロシアのプーチン大統領は可決を受けロシア駐在の米外交官ら755人の国外退去を要請するなど報復を表明していたが、署名を受けロシアのメドベージェフ首相は全面的な通商戦争にあたるとの認識を表明。

米ロ関係改善は遠のいた恐れがある。

ただ可決から署名まで数日かかっていることから、ロシアとの関係改善を目指すトランプ氏が署名に抵抗を示していた可能性がある。トランプ氏は署名はしたものの、外交政策を遂行する大統領の権限を阻害するものと批判し、自身は外国政府と議会よりも「はるかに良好な」交渉ができるとの見解を表明。トランプ氏がどの程度、厳しく制裁を実行に移すかは疑問だ。

今回の法案はロシアのほか、イランと北朝鮮も対象。トランプ氏は署名後、議員へのメッセージで「イラン、北朝鮮、ロシアによる攻撃的でかく乱的な行動を処罰し抑制する厳しい措置は支持しているものの、この法案には決定的な欠点がある」と述べた。

トランプ氏の署名について、ロシアのメドベージェフ首相は「全面的な通商戦争」に相当すると批判。「米政権との関係改善に向けたわれわれの期待は潰えた」と述べた。

米国はロシアが2014年にクリミアを併合したこと受け制裁措置を導入。ロシア経済はすでに影響を受けているが、今回の制裁強化はエネルギー部門を含む多岐にわたる産業を対象としており、影響は一段と拡大する可能性がある。

具体的には、米企業によるロシア企業への投資を制限するほか、ロシア側が33%以上の権益を握るエネルギー探索プロジェクトに米企業が参加することを禁止する。

さらに、ロシアのエネルギー探索活動に投資を行うか支援を行っている外国企業を制裁の対象とするほか、米政権はロシアの天然ガス輸出パイプライン建設に関与している企業も制裁対象に指定することが可能になる。

対象となるパイプラインにはドイツ企業が関与している「ノルド・ストリーム2」も含まれることなどから、欧州連合(EU)は域内のエネルギー安全保障に対する懸念を表明している。

[ワシントン 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中