最新記事

韓国大統領選

韓国大統領選を中国はどう見ているか?

2017年5月7日(日)17時47分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2017年韓国大統領選挙で遊説する文在寅候補 Kim Hong-Ji-REUTERS

文在寅候補の支持率が安哲秀候補を遥かに上回った理由として、中国はTHAAD配備の可否および対北朝鮮政策が深く関係していると見ている。シリア攻撃が裏目に出たと分析。韓国の国民感情を使って米国に抗議か?

文在寅候補と安哲秀候補の支持率の開きの原因を強調

韓国の有力世論調査会社REALMETER(リアルメーター)社が5月1日および2日に行なった調査によれば、左派系野党「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)氏が42.2%で、中道左派の「国民の党」のアン・チョルス(安哲秀)氏18.6%を圧倒的な差で引き離していると、中国は盛んに報道している。

その差は、韓国民がTHAAD(サード、終末高高度防衛ミサイル)の配備に反対しているからで、トランプ大統領によるシリア攻撃以来、北朝鮮問題が一触即発の状況にあり、韓国民が戦争に巻き込まれるのを怖がっていることの、何よりの表れだと中国は分析している。

3月12日付の本コラム「パク大統領罷免とTHAAD配備に中国は?
」で書いたように、中国はムン氏を「親中、親北朝鮮(対話促進、融和策)、反日、THAAD配備反対」派と位置付け歓迎している。

トランプ大統領のシリア攻撃以来の韓国選挙民の心理的変化を考慮してか、ムン氏のトーンも最近では「親北朝鮮、THAAD配備反対」に関して微妙に調整しているものの、アン氏との間には明らかな違いがある。

アン氏は選挙戦術上、ムン氏との差をつけるためにTHAAD配備に関して慎重派から賛成派に回り、米韓同盟を重視し、少なくとも北朝鮮融和派ではない。

だから中国は、韓国庶民の「THAAD配備反対運動」を大きく取り上げ、いかにTHAADを韓国に配備すべきではないかを強調しているわけだ。

THAAD配備戦略が韓国では失敗していると言いたい中国

特に4月27日、トランプ米大統領は「韓国は、THAAD配備の費用、10億ドル(約1100億円)を支払うべきだ」と語っている。これに関して韓国民だけでなく、韓国外務省も「韓国政府が土地や基盤施設を提供し、THAADの展開と運用にかかる費用は米国が負担するというのが韓米の合意だ」と反発。
  
4月28日に行われた大統領選候補者のテレビ討論会で、ムン氏は早速、このトランプ発言を使ってアン氏を攻撃した。

アン氏に対して「韓国が10億ドルを負担するようなことになっても、THAAD配備に賛成するのか」と質問すると、アン氏は「われわれが負担することはない。そうしないことは既に米韓で合意されている」と反論した。するとムン氏は「THAAD配備を積極的に歓迎したりするから、アメリカに足元を見られ、費用も出せというようなことになったのだ。韓国の交渉力を損ねている」と追い打ちをかけ、アン氏を戸惑わせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値、ナイキやマイクロ

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中