最新記事

貿易

トランプ政権の通商会議トップ「過小評価のユーロでドイツが利得」

2017年2月1日(水)00時30分

1月31日、米通商会議トップは、ドイツは「過小評価が著しい」ユーロを利用し、有利な立場を得ているとの見解を示した。写真はユーロの看板。フランクフルトで2015年1月撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

 トランプ米大統領が新設した「国家通商会議」の責任者であるピーター・ナバロ氏は、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、ドイツは「過小評価が著しい」ユーロを利用することで米国や欧州連合(EU)の貿易相手国よりも有利な立場を得ている、との見解を示した。

 同氏はユーロについて「暗黙のドイツマルク」のような存在であり、過小評価されていることで、ドイツに主要貿易相手国に対する競争上の優位性を与えていると指摘した。

 米国とEUが合意を目指してきた環大西洋貿易投資協定(TTIP)について、ドイツが大きな障害となっているとの見解を示し、TTIP協議は終わったと述べた。

 ナバロ氏の発言が伝わると、ユーロ/ドルは0.5%高の1.0764ドルに上昇した。

 ナバロ氏は対中強硬派として知られ、米製造業の復興を目指すトランプ氏が国家通商会議をホワイトハウスに新設し、政権入りさせた経緯がある。

 トランプ氏自身も2週間前の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、人民元に対するドル高が米国に大きな打撃を与えているとの見解を示していた。トランプ氏に続くナバロ氏の発言で、国際貿易の行方をめぐり一段と懸念が強まる可能性がある。

 一方、メルケル独首相は「ドイツは欧州中央銀行(ECB)に独立した金融政策運営を行うよう求めてきた」として、ナバロ氏の発言を退けた。その上で「ECBの行動に影響を及ぼすことはしない。状況を変えることはできないし、望んでもいない」とした。

 ドイツ財務省はコメントを控えた。

 みずほ(ロンドン)のヘッジファンド為替セールス責任者、ニール・ジョーンズ氏は「強いドル政策の時代は終わった」とし、「人民元に対するドル高をめぐる米国の懸念は、過小評価が著しいとのコメントでユーロ圏にも及んでいる」と話した。

[ロンドン/ストックホルム 31日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中