最新記事

抵抗

トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジョン・ルイスって誰?

2017年1月16日(月)20時49分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

公民権運動の闘士、ジョン・ルイス米下院議員 Joshua Roberts-REUTERS

<黒人差別を撤廃させた功労者を侮辱したトランプに共和・民主両党から非難が殺到。大統領就任式をボイコットする議員も続出>

 トランプ次期米大統領(70)が、公民権運動の指導者で米議会でも超党派の尊敬を集めている民主党の下院議員、ジョン・ルイス(76)を侮辱したことで、20日の大統領就任式をボイコットする動きが民主党の議員の間で広まっている。

 事の発端は、ルイスが先週13日、NBCのインタビューでトランプを「正当な大統領とは認めない」と発言したこと。「この男はロシアの協力で当選し、クリントンはロシアに潰された」「フェアではない」と、ルイスは言った。

 これに対しトランプは翌日、ツイッターで反撃した。「(ルイスは)いつも口ばかりで、行動や結果がついてこない」とか「(犯罪だらけの)自分の選挙区のことを心配したほうがいい」などと、いつもの調子でやり返したため、ルイスを英雄視する議員やメディア、市民の間で怒りが広がった。

逮捕は40回以上

 就任式をボイコットする民主党議員は、ルイスの発言以前は数人だったが、発言後は24人(15日現在)に増えた。市民団体のCREDOアクションは民主党議員すべてに就任式欠席を呼び掛けており、すでに12万6000人の署名を集めている。

 ルイスは日本ではあまり知られていないが、アメリカでは1960年代の公民権運動を代表する人物の1人で、人種差別撤廃のために生涯を捧げてきた。マーチン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」から始まる有名な演説を行った1963年のワシントン大行進を組織したのもルイスで、基調演説も行っている。

 アメリカ南部を中心とした運動の間、40回以上逮捕された。1965年、アラバマ州セルマの「血の日曜日」には、投票権を求める行進を率いて警察官から警棒で殴られ、頭蓋骨骨折の重傷を負う。87年から下院議員を務めていて、今回の就任式が初めての欠席になるという。

 16日は公民権運動の成果をたたえる休日「キング牧師の日」。反発が広がりそうだ。

トランプ>......選挙結果にケチをつけるより(自分の選挙区の心配をしたらどうだ)。話、話、話ばかりで、行動も結果もない。悲しいね! ロン・ワイデン上院議員(民主党)>これは話じゃない、ジョン・ルイスはアメリカの英雄だ 政治家志望のエバン・マクマラン>キング牧師の日の週末にちなんではっきりさせておこう。ジョン・ルイスはアメリカの愛国者だ。トランプがルイスを叩くのもそのせいさ ワシントン・ポスト紙マイケル・ガーソン>ジョン・ルイスに対して口だけで行動が伴わないなどという人間は、アメリカの歴史を何もわかっていない。彼の行動こそがこの国を自由にしてくれた 保守派の政治評論家ビル・クリストル>思った通りだ、トランプはジョン・ルイスよりプーチンのほうに敬意を払う

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中