最新記事

南スーダン

南スーダンPKOは「機能不全」、ケニアが国連批判で部隊撤退

2016年11月4日(金)16時00分
コナー・ギャフィー

Andreea Campeanu-REUTERS

<今年7月の戦闘に対応できなかった南スーダンPKOのケニア人司令官を解任した国連。反発したケニアはPKO部隊を「機能不全」と批判して、部隊を撤退させることに>(写真は南スーダンのPKOに参加するガーナ軍の部隊〔14年2月撮影〕)

 国連が南スーダンで展開しているPKO、国連南スーダン派遣団(UNMISS)から、ケニアがおよそ1000人の部隊を撤退すると発表した。ケニアの司令官が解任されたことに反発している。

 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は今週月曜、南スーダンPKOのオンディエキ司令官の解任を決めた。今年7月に首都ジュバで政府軍と反政府勢力の間の戦闘が発生した際、PKO部隊が適切に対応できなったため。この戦闘で70人以上が死亡している。

【参考記事】住民に催涙弾、敵前逃亡、レイプ傍観──国連の失態相次ぐ南スーダン
【参考記事】南スーダンの国連部隊は住民の命を守れ

 これに対してケニア政府は、オンディエキ司令官の解任と、新しい司令官を指名せよという国連からの要求を拒否した。ケニア外務省の声明では、「南スーダンのPKOが、根本的な構造的、組織的な機能不全に陥っていることは明らか。これによって当初から、任務遂行は大きく妨げられていた」と国連を批判した。

国連が一司令官に責任転嫁?

 さらに、「国連は問題の解決に取り組む代わりに、不条理にも司令官個人の責任に転嫁した」とケニア外務省は主張している。ケニアは、南スーダンの和平プロセスからも撤退する意思を示している。

 今週月曜に公表された調査結果では、今年7月の戦闘の際にPKO部隊が適切に対応できなかったのは、「部隊上層部の一部の指導力が欠如し、対応が混乱して能力が発揮されなかった」と見ている。隊員の中には自分のポジションを放棄した者もいて、国連が設定した市民保護エリアのすぐそばで戦闘が発生することも防げなかった。

【参考記事】【南スーダン】自衛隊はPKOの任務激化に対応を――伊勢崎賢治・東京外国語大学教授に聞く

 南スーダンのPKOには合わせて1万3000人の部隊が派遣されているが、およそ1000人の部隊を派遣しているケニアは、その中でも大きな役割を担ってきた。また任務強化のためにさらに4000人規模の防衛部隊を派遣する計画についても、ケニアは支持していた。

 南スーダンは2013年12月に、キール大統領が、当時のマシャール副大統領にクーデター計画があるとして対立して以降、内戦状態となった。これまでに戦闘で数千人が犠牲になっているが、キールが南スーダンの多数派のディンカ族、マシャールが少数派のヌエル族を率いる民族対立の側面もある。

 昨年8月に双方で和平合意が結ばれ、今年4月にマシャールは首都ジュバに戻ったが、7月の戦闘の後、マシャールは国外に逃れている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン

ビジネス

世界株式指標、来年半ばまでに約5%上昇へ=シティグ

ビジネス

良品計画、25年8月期の営業益予想を700億円へ上

ビジネス

再送-SBI新生銀行、東京証券取引所への再上場を申
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中