最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

クルーズ撤退、ヒラリー敗北の衝撃

2016年5月4日(水)17時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 その後、「副大統領候補」だったフィオリーナ氏が出てきて、候補者の紹介をしたあたりでは、もう会場はお葬式状態だった。やがて本人が登場して、両親とハイジ夫人、そして2人の娘達に謝辞を述べたあたりで、いつもなら歓声と拍手が出るはずだが、シーンと静まり返った会場の様子は異様だった。

 そして、1976年に「フォードが過半数の取れない1位」で共和党大会に臨んだ際に「辞退することで、自身の将来への可能性を開いた」レーガンを賛美し、会場がシーンと聞き入ったあたりで「確定」となった。程なくして本人の口から「選挙運動の停止」が宣言されると、会場には落胆のため息が漏れていたが、既に全ては終わっていたという感じだ。

 一部報道によれば、家族ぐるみで本当に「血と汗を」流してきたクルーズとしては、資金も先細りとなる中で燃え尽きたのだという。コンセッション(撤退)演説のムードからもそれはうかがえた。少なくとも、共和党主流派やトランプ派との「取引」で降りたのではなさそうだ。

 さて、直後の現時点で「今後」を占うのは難しいが、以下のことが言えるだろう。

【参考記事】予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会

 トランプは直後にスピーチをしたが、相変わらず「子供向けの語彙で、同じことを何度も言う」スタイルで押し、そこには「勝利の歓喜」はなかった。ただし、クルーズの健闘に関しては、そこだけは毒舌を引っ込めて賞賛していた。

 それはそれで、本選を意識しての「トランプ流の作戦」なのだろうが、相も変わらず「同盟国との良好な関係は保つが、応分の負担を求める。世界の警察官といった大盤振る舞いはやらない」ことを念押しし、それが「偉大で強いアメリカ」だと吠えていたことには留意する必要があるだろう。

 一方で、共和党のプレーバス全国委員長が「党の団結」を訴えるツイートを流したことで、トランプが事実上の「統一候補として認知」されたという報道も出ているが、委員長にはそこまでの権限はないので、そこは不透明だ。

 3位のケーシックは当面は選挙戦を続けるようで、少なくとも当夜のうちに撤退することはなさそうだ。一部には、これで争点は「トランプか?アンチか?」にスッキリ絞られたので、カリフォルニアでの逆転勝利と、トランプの過半数阻止に向けて、彼を「最後の砦」とした抵抗が続くという説もある。

 だが、ケーシックにはそこまでの資金力はないだろうし、トランプの「事実上の統一候補」という地位は98%ぐらい確定したと見るのが妥当だろう。残る可能性は、多くの主流派が支持しない中で、党大会も「空席が目立つ」ようになり、上下両院の改選議員が「トランプとの同時選挙」であることを一切無視して自分の議席防衛に必死になるという筋書きだ。共和党内には「大統領はヒラリーでも仕方がない」という声も以前からある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、TSA職員9400人超削減を提案 予算15

ワールド

ゼレンスキー氏、エネインフラ巡る停戦案を堅持 ロシ

ビジネス

米国株式市場=上昇、トランプ氏発言と米・イラン協議

ビジネス

NY外為市場=ドル安定的、円相場160円に接近 中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中