最新記事

核開発問題

イラン「20%ウラン製造中止」は騙しの手口?

欧米が求める「20%濃縮中止」に応じたとしても、イランは数週間で核兵器が作れるとイスラエル

2013年10月29日(火)16時18分
ダニエル・デフレイア

油断大敵 警戒を呼び掛けるイスラエルのネタニヤフ首相 Reuters

 8月に就任したロウハニ大統領の下で、イランは欧米との対話路線を急速に推し進めている。10月半ばには、核開発をめぐってP5(米英仏ロ中の5大核保有国)にドイツを加えた6カ国と協議。核兵器製造に直結する濃縮度20%のウランの製造中止を求める欧米諸国に対し、イラン側もそれを受け入れることを提案したと報じられている(核兵器製造に必要な濃縮度は90%以上だが、ウランは20%まで濃縮すれば比較的短期間で90%以上に濃縮できるため「20%」が重視される)。
 
 だが、イランと長年敵対してきたイスラエルは警戒を緩めていない。イスラエルのネタニヤフ首相は10月27日、「イランはウランの20%濃縮を断念する準備ができており、その点は重要でない」と閣議で発言。20%にこだわらず、イランの核開発全体を止めさせる方策が必要だと訴えた。「重要なのはイランの濃縮技術が高度化し、(原子力発電などに使われる)濃縮度3〜5%のウランを数週間で90%にできるという点だ。イランへの圧力を強めるべきだ」

 20%問題をめぐっては、イラン側の対応も二転三転している。国会議員のホセイン・ナカビ・ホセイニは先週、イランはすでに20%濃縮を停止していると明言。「ウラン濃縮の中止は意味がない。現時点では濃縮は行われていないのだから」と語ったとされる。

 だがイラン議会のアロオディン・ボルジェルディ外交・安全保障委員長は26日、濃縮度20%のウラン製造を「継続している」と発言し、「製造中止」を否定した。11月上旬に予定される次回の核協議を前に、交渉カードを温存したいのだろうとの見方もある。

 各国の原子力活動を監視する国際原子力機関(IAEA)も、イランが濃縮度20%ウランの製造を中止したとの主張を裏付ける証拠はないとしている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長 対米投資も検討

ワールド

米国がAUKUS審査結果提示、豪国防相「米は全面的

ワールド

アングル:大火災後でも立法会選挙を強行する香港政府

ビジネス

リオ・ティント、コスト削減・生産性向上計画の概要を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中