最新記事

アメリカ社会

黒人少年を射殺した白人警官の言い分

「ハルク・ホーガンと子どもみたい」だった格闘の末に

2014年11月26日(水)15時12分
ジャック・ムーア

高まる緊張 不起訴になったファーガソン市警の警察官ダレン・ウィルソン St. Louis County Prosecutor's Office-Handout-Reuters

 黒人少年マイケル・ブラウン(18)を射殺した白人警官ダレン・ウィルソン(28)の不起訴が決まった今週月曜の夜、ミズーリ州ファーガソンの街は抗議デモに参加する市民と警官や州兵の衝突で焼け野原になった。

 だが双方ともこれで終わるつもりはない。同州知事のジェイ・ニクソンは再度の衝突に備え、追加で1500人の州兵の出動を要請。「昨夜のような無法状態は決して繰り返さない」と、火曜の記者会見で語った。「もっと徹底して抑え込む」

 人々の怒りの的になっているウィルソンは、なぜ丸腰のブラウンを射殺したのか。捜査対象者を起訴するかどうかを判断する大陪審を構成する12人の市民はなぜ、ウィルソンを不起訴にしたのか。ウィルソンが9月に大陪審に語った88ページにおよぶ証言から、その言い分を取り出してみよう。

 まずウィルソンは、今年8月の事件当時の様子を「ハルク・ホーガンと対決する5歳の子どものようだった」と語っていた。

 証言によれば、道路の中央にいたブラウンに脇に寄れと命じたウィルソンに対し、ブラウンが「オマエの言うことなんかクソ食らえだ」と応じたことから事態は悪化していったという。

 ブラウンはパトカーに近づき、さらに命令し続けるウィルソンを殴り始めた。

「もう一発顔面にパンチを食らったら、やられるんじゃないかと本気で思った。(ブラウンは)自分よりも明らかに大きかったし、強かった」。

「顔に2発(パンチを)受けていたので、3発目をまともに受けたら致命的かもしれなかった。最低でも気を失って、その後はどうなるかわからなかった」

 ウィルソンはまた、殴られたり引っかかれてできた首の傷跡が病院で撮影された写真に写っていたと主張した。「見えにくかったが、そこに写っていた」

 この後2人は取っ組み合いになり、ブラウンは「オマエみたいな弱い奴にオレは撃てない」と言ったという。

 ウィルソンは銃を取って2回撃とうとしたが、いずれも阻止された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中