最新記事

超高速鉄道

日本の対米リニア輸出は夢物語だ

日本政府が大型融資を申し出た米東海岸のリニア新幹線構想が実現しない理由

2014年1月9日(木)16時28分
マシュー・イグレシアス

世界に羽ばたく? 日本政府はリニア技術の売り込みに躍起だが(写真は04年の旧型モデル) Yuriko Nakao-Reuters

 アメリカが検討している超電導リニア新幹線の導入構想をめぐって、日本政府がオバマ政権に総工費のおよそ半額に当たる400億ドルを融資する意向を示していると報じられた。安倍政権はリニア技術を世界に輸出する足がかりとして、米東海岸でのリニア導入を全面的に支援している。

 当面の開業区間は、ワシントンDCとその北に位置するメリーランド州ボルチモア間の約60キロ。現在、約1時間かかるこの区間が、リニア導入によって15分に短縮される。将来的にはワシントンとニューヨーク、ボストン間の全長約730キロを超高速鉄道で結ぶ計画だという。

 結構な話だ。ただし、大きな問題がある。実際の工事コストが想定されている総工費をはるかに上回ることだ。

 アメリカにおける建設工事コストの高さは狂気の沙汰で、他の先進国の水準を大きく上回っている。マンハッタンの地下にトンネルを掘り、クイーンズからグランドセントラル駅までロングアイランド鉄道を乗り入れさせる計画の予算は87億6000万ドル。アムトラック(鉄道旅客輸送公社)が進めるワシントンDCのユニオン駅の改装工事も、70億ドルを要する見込みだ。

 まずは工事費高騰の原因を解決することが先決だが、背景には職業別労働組合の伝統や連邦政府の権限が弱いことなど根深い問題があり、解決は容易ではない。

 確かなのは、工事費問題が解消しないかぎり、どんな超高速鉄道構想も夢物語でしかないということだ。日本やフランス、スペインであれば採算が合う計画も、アメリカでは費用対効果が悪すぎて実現しそうにない。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中