最新記事

債務上限

米経済デフォルトまでのカウントダウン

借金限度額の引き上げで議会と合意できなければ大惨事になる──ついにバーナンキが悪夢のシナリオを警告

2011年7月15日(金)16時02分
トマス・ミュシャ

缶詰折衝 ホワイトハウスで議会指導者たちを説得するオバマ(左から3人目、7月14日) Jason Reed-Reuters

「経済の大惨事だ」――こんな言葉、誰も聞きたくない。発言の主が、アメリカ経済で最も重要な地位に就くベン・バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長となればなおさらだ。普段は直接的な物言いをわざと避けたがる彼がここまではっきり言うのだから、事態がいかに深刻か分かる。

 バーナンキは7月13日、バラク・オバマ大統領と議会が政府の債務上限(借金の限度額)を8月2日までに引き上げられずデフォルト(債務不履行)状態になれば、アメリカと世界経済が大惨事に陥ると警告した。同日には、格付け会社ムーディーズが米経済の先行きについて身も凍るような発表をしたばかりだ。


 ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米国債の「Aaa」格付けを引き下げる方向で見直すことを決定した。債務上限引き上げが期限内に行われず、米財務省の債務支払いが履行されないデフォルト状態に陥る可能性が高まっているためだ。ムーディーズは6月2日、債務上限引き上げをめぐって大きな前進が見られない場合には7月半ばに格付け見直しを行うと発表していた。


 別の格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)も厳しい目を向けている。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙によれば、S&Pは米議員らに対して非公式にこう警告しているという。「たとえ米政府が国債の元利払いをすべて履行したとしても、社会保障などの支払いができない場合には格下げする可能性がある」

 債務上限の引き上げはアメリカがこうしたデフォルト状態に陥るのを防ぐための策なのだが、これをめぐる政府・与党(民主党)と野党(共和党)の間の協議はまったくうまくいっていないようだ。ニューヨーク・タイムズ紙はその様子を赤裸々に報じている。


 13日夜に行われた与野党間の協議は、緊迫した空気のなか幕を閉じた。共和党関係者によると、オバマ大統領は興奮した状態でぶっきらぼうに部屋を後にしたという。一方の民主党側に言わせれば、オバマは今後に向けた策について熱弁を振るってから立ち去った。

 ワシントンの人間は皆、アメリカが財政破綻に突き進んでいるという危機感にさいなまれていた。この日、浮かない顔をした議員たちは解決の糸口を探しながら、いくつもの協議を掛け持ちして走り回っていた。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外務省、高市首相に「悪質な」発言の撤回要求

ビジネス

訂正-三越伊勢丹HD、通期純利益予想を上方修正 過

ビジネス

シンガポール中銀、トークン化中銀証券の発行試験を来

ビジネス

英GDP、第3四半期は予想下回る前期比+0.1% 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中