最新記事

米中間選挙

オバマが土壇場で息を吹き返した?

民主党惨敗ムードが強まるなか、最新世論調査でオバマの支持率がまさかの急上昇

2010年10月25日(月)19時13分
デービッド・グレアム

勝負はこれから オバマ率いる民主党は大敗するというのが大方の予測だが(10月10日、フィラデルフィアの選挙集会で) Jim Young-Reuters

 民主党が惨敗すると決めて掛かるのは、大きな間違いかもしれない。アメリカ中間選挙まで1週間あまり。バラク・オバマ大統領が率いる民主党が大敗を喫するというのが大方の予測だが、最新の本誌世論調査によれば、民主党は共和党と接戦状態にあり、オバマの支持率もここに来てまさかの急上昇を見せている。

 10月20、21日に実施した世論調査によると、登録有権者のうちで民主党候補に投票する可能性が高いと答えた人は48%。一方で、共和党候補に投票する可能性が高いと答えた人は42%だった。

 さらに、9月後半の調査で48%だったオバマの支持率は54%に上昇。不支持率は今年2月以来最低の40%まで下落した。

 ただし、世論の風向きが大きく変わったとは言い切れない。94年の中間選挙では、今回のオバマと同じように、9月後半からの1カ月で当時のビル・クリントン大統領の支持率が本誌世論調査で急上昇したが、11月の選挙では民主党が大敗した。

 それでも、民主党と共和党の支持層の間の「選挙熱のギャップ」が小さくなってきたとは言えそうだ。今回の世論調査で、中間選挙に関心があると答えた人の割合は、共和党支持者の間では69%、民主党支持者の間では62%。民主党支持層の中で実際に投票所に足を運ぶ人の割合は、共和党支持層より低くなるという予測が多いが、その差は一般に言われているほど大きくないかもしれない。

 どちらの党に議会の多数党になってほしいとかという点では、有権者の態度が二分されたが、48%対43%で民主党がわずかにリードしている(この世論調査の誤差率は±4.3%)。

期日前投票は民主党がリード

 今回の世論調査結果を見る限り、期日前投票を行う有権者の支持獲得を狙う民主党の戦略は、功を奏しているのかもしれない。既に投票を済ませた有権者に投票結果を尋ねたところ、52%対42%で民主党が10ポイント優位に立っている(ただしサンプル数が極めて少ないので、断定的な結論は下せない)。期日前投票の比重は年々高まっており、今回の中間選挙では10人中3人が期日前に投票を行うと予測されている。

 この世論調査を実施したプリンストン・サーベイ・リサーチ・アソシエーツのラリー・ヒューギック会長の見るところ、中間選挙での共和党の優位はおそらく揺らがないが、最新の調査結果によれば、一部で言われているほど地滑り的な勝利にはなりそうにないという。「共和党が議席を伸ばすのは間違いないが、どの程度になるかは分からない」

 草の根保守派連合の「ティーパーティー」について、世論調査にはどういう結果が表れているのか。中間選挙に投票するつもりだと答えた人のうちで、ティーパーティーを支持する人は24%、反対の人は27%。

 具体的な争点について見ると、ティーパーティー支持者の81%は政府による金融機関の救済に不支持と回答。90%は医療保険改革に反対で、85%は政府の景気刺激策が経済に悪影響を及ぼしていると考えている。回答者全体では、金融機関救済を支持しない人こそ3分の2に達したが、医療保険改革と景気刺激策への賛否はほぼ拮抗している。

有権者はやはり経済を最重視

 9月の本誌世論調査と同様、アフガニスタン戦争、医療保険、税制、失業対策など、実にさまざまなテーマに関して、有権者は共和党より民主党を評価している。一方、移民政策と財政赤字対策では共和党の評価が高い。

 ほとんどの有権者が経済を重視しているのは予想どおり。どの候補者に投票するかを決める上で経済政策を最重視すると答えた人は、62%に達した。2番目に重視されているのは医療保険制度改革だったが、この争点を最重視すると答えた人は約4分の1にとどまっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-エヌビディア、対中輸出を2月に

ワールド

トランプ政権、大使ら約30人召還 「米国第一」徹底

ワールド

ウクライナ巡る米ロ協議、「画期的ではない」=ロシア

ビジネス

アルファベット、クリーンエネ企業買収 AI推進で電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中