最新記事
投資

2025年の米重要指標──例外的に強い米景気、FRB、ドル、ボラティリティー、暗号資産はどう動く

2025年1月6日(月)11時27分
トランプ次期大統領

米国の政権交代は2025年の株式、債券、通貨に大きな影響を及ぼし、投資家がポジション再調整を迫られてもおかしくない。写真はトランプ次期大統領。2024年11月、テキサス州で代表撮影(2025年 ロイター)

米国の政権交代は2025年の株式、債券、通貨に大きな影響を及ぼし、投資家がポジション再調整を迫られてもおかしくない。

そこで投資家が注視している市場のテーマや重要分野の概要と見通しを以下にまとめた。

◎米経済の例外的強さ

投資家の間では、米経済の例外的な強さは25年も持続するとの予想が一般的。しっかりした消費と底堅い労働市場を背景に、米国の経済成長の足場は他の多くの先進国よりも強固になるからだ。

米経済は、トランプ次期政権が打ち出す可能性がある法人減税を含めた税制措置がさらなる援護射撃になるだろう。そうした減税は議会の承認が必要だが、実現すれば企業収益と株式投資家の心理を支えてくれる。

対照的にユーロ圏経済は第3・四半期こそ想定より高い成長を見せたものの、先行きは依然としてさえない。それはトランプ次期政権が高額の輸入関税を導入し、中国との貿易摩擦が激化するとともに消費者心理が冷え込むことが原因だ。

カーソン・グループのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ソヌ・バーグヘス氏は「25年は金融・財政政策面で追い風が吹く可能性を背景に、米国の経済成長が他の世界を上回ると見込んでいる」と述べた。

◎FRBはどう動くか

投資家が25年において最重要視しているのは、米連邦準備理事会(FRB)による利下げの幅とペースにほかならない。FRBは24年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決めたが、今後の利下げペースを緩める意向を示唆した。

株価はこれまで利下げ期待で押し上げられてきたとはいえ、このFOMC後に国債利回りが急騰。金利動向の先行きが株高の勢いに水を差す恐れが生じている。

◎ドルの王座

ドル弱気派は24年痛い目に遭い、大半の為替ストラテジストはドルの堅調が持続すると予想している。

24年を通じてドルは対主要通貨バスケットで7%上昇。その原動力となった相対的な米経済の強さや米国債利回り上昇などは引き続きドルを支える見込みである上に、トランプ次期政権の関税や保護貿易主義もドル高につながるだろう。

また米国で再び物価が上昇してFRBの利下げにブレーキをかけるとみられる一方、他の主要中銀は利下げを継続する中で、ドルは一段と上昇しそうだ。

ただドル高は、米国の多国籍企業の業績見通しに影を落としかねず、通貨安に見舞われる他国の中銀のインフレ退治に悪影響を与える可能性もある。

コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・スチャモッタ氏は「ドルがこの1年でまた目覚ましいほど上昇すれば世界経済の何かを破壊するかもしれない。しかし幾つかの大きな不確実性が存在し、米経済の例外的な強さもほぼ織り込まれている以上、さらなる(ドルの)アウトパフォーマンスは達成が難しいのではないか」と指摘した。

◎ボラティリティー

12月FOMCで示された今後の想定利下げ回数が以前より減少し、一時的に連邦政府機関の閉鎖が懸念された場面で米国株は急落し、いかにも安定しているように思われる市場がすぐに混乱する実情が垣間見えた。

複数のアナリストは「ボラティリティー・ショック」にいつ襲われてもおかしくないと警告する。

BofAグローバル・リサーチのアナリストチームは、第1次トランプ政権が発足した2017年のような株式市場の記録的なボラティリティーの低さが再現されるとは予想していない。

またニューバーガー・バーマンのグローバル債券・通貨運用チームでシニア・ポートフォリオマネジャーを務めるフレデリック・レプトン氏は「25年の金融市場におけるショック吸収役は外国為替になるだろう」と述べた。

◎暗号資産フィーバー

24年の暗号資産(仮想通貨)ビットコインとその関連株に対する投機熱は、25年に入っても衰えそうにない、というのがストラテジストの見方だ。

インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「24年は投機にとって記念すべき1年だった。その熱気が自己増殖しつつある」と指摘した。

ビットコインは12月、トランプ次期政権が暗号資産に有利な規制環境を推進するとの思惑から10万ドルの大台を超えて最高値を更新。関連株では大口のビットコイン保有で知られるマイクロストラテジーの株価が24年を通じて400%余り上昇した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国製EV、競合より3─5年先行 保護主義も克服へ

ワールド

ハマス、22日に人質6人解放の見通し 4人の遺体も

ワールド

ゼレンスキー氏「ウクライナ抜きの和平協議不可」、サ

ワールド

イスラエル、ヨルダン川西岸の難民キャンプを破壊 一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 5
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    「レアアース」と軍事支援...米国・ウクライナの危う…
  • 10
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 4
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 5
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中