アメリカに初めて「ゴッホの絵画」を輸入した男...2500点の名画を集めた大富豪バーンズの知られざる「爆買い人生」

SHOPPING FOR A MUSEUM

2025年4月17日(木)15時00分
ブレイク・ゴプニック(美術評論家)

33点の絵画から受けた衝撃

ゴッホと共にセザンヌが1点、ルノワールのマイナーな作品数点も届いた。さらにパリの筋金入りの前衛芸術家たちも仲間と認めたに違いない「ペカソ」とかいう画家の作品も、1点あった。

もっともグラッケンズが選んだのはピカソがラディカルな画風をようやく確立し始めた20世紀初頭の、比較的分かりやすい女性のポートレートだった。


カフェでたばこを吸う赤毛の女の肖像は、グラッケンズがあまり評価しなかったジャンジャック・エンネルの赤毛の女性像と比べてもさほど新鮮味が感じられない。価格も200ドルと、セザンヌに支払った金額のわずか15分の1だった。

近代絵画を見慣れた21世紀の目には無難に映るかもしれないが、バーンズはこの33点にとてつもない衝撃を受けたはずだ。モダンなフランス絵画の買い付けを依頼したバーンズも、そうした作品をじかに見た経験はほとんどなかった。

フランスから届いた荷を解き、自分の周りではじける斬新な色彩やフォルムにさぞかし驚いたことだろう。

だが、バーンズは衝撃を受けるのが好きだった。何しろ芸術に目覚めた原点は、猛スピードで走る消防車を目撃したことと宗教的な恍惚体験にあると語っていたのだ。収集作品にも、彼はインパクトを求めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回を改めて要求

ビジネス

独総合PMI、12月速報51.5 2カ月連続の低下

ビジネス

ECB、銀行に影響する予算措置巡りイタリアを批判

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中