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2009.04.15

ニューストピックス

GM「救世主」サターンの挫折

Saturn Was Supposed to Save GM

2009年4月15日(水)10時00分
ポール・イングラシア(自動車業界ジャーナリスト)

ディーラー主導で再生目指す

 「これまでとは違う会社」のほうも怪しくなっていた。03年12月、サターンの労働者はGMとUAWの主契約に戻ることを投票で決めた。2カ月後、サターン専用工場はGMスプリングヒル工場と名前を変えた。現在、サターンは国内外の数カ所の工場で製造されている。スプリングヒルでサターンが造られたのは07年が最後だ。

 サターンの初期にスプリングヒルのUAW支部を運営し、ヨキッチの仲間によって職を奪われたマイク・ベネットは、GMも組合もサターン本来の理念を放棄したのだと指摘する。「サターンの戦略が全米の自動車産業で採用されていたら、現在の状況はまったく異なっていただろう」と、彼は言う。

 GMが2月に政府に提出した再建策によれば、サターン、サーブ、ハマーは合計で年間10億ドルの損失を出しており、同社はこの3ブランドを手放すつもりだ。サターンを放棄するという決定に迷いはなかったと、あるGM関係者は言う。

 一方、サターン部門のジル・ラドジアック社長は「これからの可能性にかなり期待している」と言う。全米のディーラー約400人が音頭を取り、サターンを燃費が良くて環境に優しい車として再生させようと努力している。メーカーの造った車を売るだけのディーラーではなく、ディーラーがサターン社の株主となり、本当に売りたい車を造らせる計画だ。

 もちろん、計画の実現までには多くのハードルがある。それはサターン再生プロジェクトの先頭に立つ投資家スティーブン・ギルスキーも認めている。

 それは大きな賭けだ。初期のサターンが技術的な問題を抱えていたのは確かだが、それでもGMの足かせとなっている労使関係の膠着状態を、一時的にせよ打破してみせたことも事実。だから、サターンには今も熱狂的なファンがいる。

 四半世紀前のロジャー・スミスは、サターンに「再生」の期待を託した。ウィスコンシン州のディーラーのトム・ジンブリックは、その精神を忘れていない。「ルールは自分たちで決めればいい。そうしてもう一度、歴史を変えるんだ」

[2009年4月15日号掲載]

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