コラム

松本人志「性加害」疑惑の背景にある、どんな芸能人も逆らえない「時代の変化」の正体とはつまり何なのか

2024年02月14日(水)20時43分
松本人志氏の性加害疑惑

SPORTS NIPPON/GETTY IMAGES

<松本人志氏の問題について、よく言われる「時代が許さなくなっている」という言葉が具体的に意味していることとは?>

ダウンタウンの松本人志氏が、女性に性的行為を強要したとする週刊誌報道をめぐり、エンタメ業界に激震が走っている。

この問題には多くの著名人がコメントを出しているが、時代に合った適切な話ができる人と、状況にどう対処してよいか分からず、的外れなコメントになっている人にくっきり分かれている。今回の出来事は、図らずも時代の変化に対するリトマス試験紙の役割を果たしているようだ。

現在、係争中となっている松本氏の裁判の行方はともかく、今回のようなスキャンダルについては「時代が許さなくなっている」という言い方で説明されることが多い。だが、時代が変わったというのは具体的に何を指しているのだろうか。

これにはさまざまな要因が絡んでいるものの、あえて単純化すると経済環境の変化、より具体的に言えば資本主義が成熟したことによる企業行動の変容と考えるのが妥当だろう。

戦後の高度成長時代においては社会全体が貧しく、需要に対してモノが不足していたため、企業は品質の良い製品やサービスを安価に提供できればそれでビジネスが成立していた。企業のスタンスや価値観と、提供される商品は完全に分離していたと判断していいだろう。

企業の価値観が顧客にとって重要なポイントに

だが資本主義が成熟化してくるとそうはいかなくなる。モノやサービスは十分に足りているので、顧客が商品に求めるものは、なぜその商品を自分が選ぶのかという、より積極的な理由、言い換えれば、ある種の「物語」である。

単純に価格が安く品質が良いだけでは不十分であり、自身の生活と照らし合わせ、その商品や提供している企業に対して共感できるのかといった、より根源的な部分が選択基準に入り始めている。

一連の変化を受けて、現代社会ではマーケティングの在り方も新しい手法にシフトしており、ライフスタイルや価値観を通じて顧客に訴求することが当たり前となってきた。新時代において大成功している企業といえば米アップルが代表的だが、日本企業も含めて、多くの企業が同様の製品戦略に向けて動き始めている。

このような時代においては、企業がどういった価値観を持ち、どの番組を支援しているのかは、顧客にとって無意識的かつ重要なポイントとなっている。逆に言えば、性加害疑惑など、人権に関わる騒動に巻き込まれているタレントが出演する番組にCMを入れること自体がリスク要因となってしまう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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