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マクロスコープ:消えない予算年度内成立論、高市首相の思い強く 実現には高いハードル

2026年02月17日(火)11時32分

写真は高市首相。2月9日、東京で代表撮影。REUTERS

Tamiyuki Kihara

[東京 17日 ロ‌イター] - 特別国会があすから始まる。衆院解散を受けて先延ばし‌になっていた本格的な国会論戦だ。本来であれば1月末ごろからスタートしたはずの2026年度当初予算​案の審議が約1カ月ずれ込む中、高市早苗首相(自民党総裁)は年度内成立にこだわり続けている。衆院選圧勝の追い風を受け、国民生活最優先の姿勢を示す狙いだ。ただ、122兆円を⁠超える過去最大規模の予算案だけに、自民内からも丁​寧な審議を求める声が出ている。

<官邸からの指示>

「国会の従来の慣習を変えれば(予算)年度内成立は可能だ。まさに国民の生活に直結するのが本予算だから通常のスペースでやる必要はない」。自民と連立を組む日本維新の会の吉村洋文代表はロイターの取材にこう強調した。「実は党首会談をしたときに高市首相がおっしゃっていた。非常に思い入れが強いところだ」とも述べ、予算編成の遅れによる国民生活への影響を抑えるため、高市氏から年度内成立を目指す考えを⁠直接告げられたことも明らかにした。

来年度の予算案を審議する通常国会は、例年1月中旬から下旬に召集される。2月は連日予算委員会を開き、与野党が政府に対して質問を重ねる。国会法で定められた公聴会で専門家らの意見も聴いた上で2月末か3月頭に衆院を⁠通過。参院で​も同様に審議し、年度内成立を達成するのが通例だ。

その風景が今回は大きく異なる。高市首相が1月23日、衆院解散に踏み切ったからだ。解散によって衆院議員がいなくなっては当然審議ができない。2月8日の投開票を経て、議員の入れ替えなどの時間を確保した上でようやく18日に特別国会が召集されることになった。この時点ですでに例年に比べて約1カ月の遅れが生じていることになる。

それでも複数の関係者によると、高市氏は予算の年度内成立にこだわり続けている。ある政府関係者は「首相官邸から年度内に衆参の審議を押し込めないか調べるよう指示があった」と明かす。経済官庁幹部は「高市氏は解散以降、ずっと年度内成立の可能性を探っていた」⁠と明かした上で、「通常考えればどうやっても無理だ。暫定予算を組むことになるが、説得できる人が誰も‌いない」と嘆いた。

<二つの可能性>

「無理」と言われる理由は、国会が積み上げてきた慣習があるからだ。そもそも予算編成は国の政策全般に関連する最も重⁠要な作業だ。「⁠国会の花形」とも言われ、例年政策のみならず政府の基本姿勢についても丁々発止の論戦が繰り広げられてきた。そのため、衆参両院でそれぞれ70―80時間程度の審議時間を積み上げるのが一般的だ。

特別国会で年度内成立を実現しようとする場合、衆参で同等の審議時間を確保するなら3月13日ごろに衆院を通過させる必要がある。年度末までの成立が強く求められる税制改正などの「日切れ法案」の審議も進めなければならず、予算委を例年通り開くことは困難だ。前出の政府関係者は「何とかならないかと調べてい‌るが、解が見当たらない」と頭を抱えた。

一方、国会関係者は二つの可能性を指摘する。一つは与党の質問時間を大幅に短縮する​案だ。質問時‌間は基本的には議席数に応じて配分されるため、⁠与党が譲れば大幅な時間短縮につながる可能性はある。もう一​つは休日返上で審議を進める「奇策」だ。国会は土曜や日曜に開くことも可能で、それができれば短期間でより多くの審議時間を確保できる。

<折れるか、突き進むか>

ただ、いずれにしても野党側の理解や協力が得られる保証はない。中道改革連合の小川淳也代表はNHKのインタビューで、「年度内成立を前提とした対応に直ちに応じることはない」と釘を刺した。衆院で圧倒的な議席を得ているとはいえ、大規模災害など特別な事情もない中で野党の主張を完全に無視するような国会運営は「強行」との批判を招く恐れもある。

さらに、参院とい‌うハードルも待ち受ける。仮に衆院で迅速に審議を進めたとしても、参院で自民と維新が「少数与党」であることに変わりはない。強引な姿勢で野党の反感を買えば、ほかの法案審議の進み具合にも影響が出かねない。これには身内であるはずの参院​自民幹部からも「高市氏は自らの判断で衆院選に打って出た。そのしわ寄せ⁠を参院が受けるのはおかしい」と、丁寧な審議を求めた。

一方、国民民主党の玉木雄一郎代表は17日の記者会見で「年度内成立を含めて早期の成立に向けた協力、努力はしたいし既存の(国会の)やり方にとらわれる必要はないが、どのようなタイミングで早期成立を目指すのか与党側から考え方を示してほしい」と述​べた。その上で「予想を裏切らないという観点では(年度内成立は)重要だが、予測可能性を害さない形で財政運営できれば(年度を越えたとしても)マーケットも心配しなくていいのでは」とも指摘した。

年度内成立が困難となれば、政府は短期間の暫定予算を編成して当面必要な財源を確保する構えだ。最後は折れるか、それとも国会の慣習や反対意見を振り切って突き進むか。特別国会の序盤で、高市氏は早速大きな判断を迫られることになる。

(鬼原民幸 編集:橋本浩)

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