レバノンでまた通信機器爆発、20人死亡 日本製トランシーバーか
レバノン治安筋などによると、首都ベイルート近郊や各地で18日、イスラム教シーア派組織ヒズボラ戦闘員が使用していた通信機器が一斉爆発した。レバノン・シドンで同日撮影(2024年 ロイター/Hassan Hankir)
[ベイルート 18日 ロイター] - レバノンの首都ベイルート郊外など同国各地で18日、イスラム教シーア派組織ヒズボラ戦闘員が使用していたトランシーバーが一斉爆発した。前日にはヒズボラが使っていたポケットベルが相次いで爆発しており、さらに緊張が高まった。
レバノン保健省は、20人が死亡し、450人以上が負傷したと発表した。爆発はベイルート郊外や東部ベカー高原を中心に発生。前日の一斉爆発では12人が死亡、3000人近くが負傷した。
爆発した通信機器の画像には「ICOM」と「日本製」のラベルが貼られていた。日本の無線機メーカー、アイコムは19日、この報道について「当社から出荷した製品かどうかは確認できない」とのコメントを出した。
また、爆発したとされるモデルについて、約10年前に販売を終了したと説明。バッテリーの生産も終え、画像の機器には偽造品防止のためのホログラムシールが貼付されていないとした。海外向け製品の出荷に際しては、経済産業省が定めた厳格な輸出管理をしているという。
治安筋は、イスラエルの情報機関モサドの仕業としているが、イスラエル政府当局者は爆発についてコメントしていない。ヒズボラのある幹部は、同組織の安全が創設以降で最も侵害されたと述べた。
イスラエルのガラント国防相は空軍基地で発言し、「われわれは戦争の新局面を開きつつある。これには勇気と決意、忍耐が必要」と述べた。
一方、ヨルダンのサファディ外相は、イスラエルが多くの戦線で危険な緊張激化を画策し、中東を地域戦争の瀬戸際に追いやっていると非難した。
国連安全保障理事会はアラブ諸国の要請を受け、今回の爆発事件を議題とする会合を20日に開く。
治安筋によると、ヒズボラはこの日爆発した無線機を5カ月前に購入。17日に爆発したポケットベルの購入とほぼ同時期という。ヒズボラはイスラエルによる携帯電話の傍受を回避するため、ポケベルなど一昔前の通信機器を使っていた。
レバノン赤十字はXへの投稿で、ベイルート南部やベカー高原など多くの地域で発生した複数の爆発に対し、30の救急隊が出動していると発表した。18日に起きた爆発のうち少なくとも1回は、17日の爆発で死亡した人々の葬儀が行われていた会場付近で発生した。
イランのファルス通信は、イランの駐レバノン大使が17日の爆発で軽傷を負ったと報道していたが、18日付の米紙ニューヨークタイムズ(NYT)は、イラン軍筋の話として、大使が片目を失明し、もう片方の目にも重傷を負ったと報じた。
イランの国連大使は18日付の文書で一斉爆発への「対応で必要と見なす措置を講じる権利を国際法の下で留保する」と表明した。
ヒズボラはイスラエルに対する報復を宣言しており、18日にはイスラエルの砲兵陣地をロケット弾で攻撃したと発表した。
米国のカービー大統領補佐官は18日、一斉爆発が停戦協議に与える影響を評価するのは時期尚早との認識を示した。
ある米政府当局者は、イスラエルが17日にレバノンで何かを行う考えを米側に伝えていたが、詳細を明かしておらず、一斉爆発は米国も予想していなかったと語った。