ニュース速報
ワールド

焦点:トランプ氏演説、党のイメージ刷新努力台無し 結局いつもの悪口に

2024年07月19日(金)18時29分

 米共和党は中西部ミルウォーキーで4日間にわたり全国大会を開催し、登壇した多くの演説者はトランプ前大統領が暗殺未遂を経て愛情深く思いやりのある家庭人に変わったと印象付けようと試みた。18日撮影(2024年 ロイター/Elizabeth Frantz)

Tim Reid

[ミルウォーキー 19日 ロイター] - 米共和党は中西部ミルウォーキーで4日間にわたり全国大会を開催し、登壇した多くの演説者はトランプ前大統領が暗殺未遂を経て愛情深く思いやりのある家庭人に変わったと印象付けようと試みた。

18日夜のトランプ氏による指名受託演説の序盤は、大統領選で鍵を握る無党派層に受け入れられるよう謙虚で人々を結束させる人物に見せる計画に合わせているように見えた。

トランプ氏は死と隣り合わせになったことを受けて、当初予定していた演説を書き換え国民に団結を訴えると今週米紙ワシントン・エグザミナーに述べていた。

実際に演説の最初の数分間はそうした姿勢が見られた。民主党を含む全ての国民のための大統領になりたいと述べ、分裂した国を癒したいと呼びかけた。13日に起きた暗殺未遂事件について詳しく語り、事件は自身に強い影響を与えたと述べた。

「政治があまりにも頻繁にわれわれを分断する時代において、今こそわれわれは同じ市民であることを思い出す時だ」と語りかけた。

だがこの刷新されたトランプ氏の姿勢は30分しか続かなかった。その後は対立候補を悪者にして喜び、大げさな侮辱の言葉を投げつけるいつものトランプ氏に戻った。共和党全国委員会が丹念に練り上げた団結のメッセージを台無しにした。

大会史上最長となる92分に及ぶとりとめのない演説で、民主党のバイデン大統領を「米国史上最悪の大統領」と決めつけ、ペロシ元下院議長を「頭のおかしいナンシー・ペロシ」とこき下ろした。

「民主党は司法制度を武器にして敵に民主主義の敵というレッテルを貼ることを直ちにやめるべきだ。これは真実ではない。私は米国民のために民主主義を救っている」と訴えた。

米国への不法移民は「史上最大の侵略」であり、毎年何十万人もの米国人の死につながっていると述べた。どちらの主張もデータによって裏付けられてはいない。

米国は崩壊し衰退しつつあり、都市には犯罪がまん延し経済は落ち込んでいるという暗いイメージを描き、自らを救世主として売り込む定番の演説と化した。

共和党のストラテジストでトランプ氏に対して批判的な立場を取るメアリー・アンナ・マンキューソ氏は「今回はもっとソフトな一面を見せ、違うトランプ氏になると聞いていた。しかし演説は国民を団結させるためのものではなかった。これまでと同じトランプ氏であり、違いはなかった」と述べた。

ただトランプ氏は集会でよく使う最も辛辣(しんらつ)ないくつかの言葉を避けていた。いつもはバイデン氏を衰弱した大統領とやゆするが、今回はバイデン氏の名前に言及したのは2回だけだった。

別の共和党のストラテジスト、フランク・ランツ氏は演説があまりに長く開始時間も遅かったため、多くの視聴者は最初の30分しか見なかったはずだと述べ、「完璧」だったと評した。

通常の攻撃の最も激しい要素は抑えられており、典型的なトランプ氏のスタイルだったが、普段よりもとがった部分が少なかったと語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中