ニュース速報

ビジネス

再送英財務相、所得税最高税率引き下げ案を撤回 政権に打撃

2022年10月04日(火)07時32分

 10月3日、クワーテング英財務相は、所得税の最高税率を廃止する計画を撤回することを明らかにした。写真は9月6日、ロンドンの首相官邸前で撮影(2022年 ロイター/Toby Melville)

(本文の誤字を修正しました)

[ロンドン/バーミンガム(英国) 3日 ロイター] - クワーテング英財務相は3日、所得税の最高税率を引き下げる計画を撤回することを明らかにした。トラス政権は発足から1カ月足らずで屈辱的な政策変更を強いられた。

先月発表した大規模減税や国債増発などの財政計画は市場を揺るがし、野党のみならず与党内でも批判の声が上がっていた。

450億ポンドとされた減税規模のうち、最高税率引き下げが占めるのは20億ポンド程度に過ぎないが、財源を明示しなかったため最も強い批判を浴びた。

同相は声明で「(最高)税率45%の廃止は進めない。われわれは理解し、耳を傾けた」と述べた。この政策が経済を成長させ、家計が厳しい冬を乗り越えるのを助ける取り組みを妨げていたことを認めるとした。

BBCラジオに、軌道修正の決定には「謙虚さと悔恨の念がある」と述べた。

クワーテング財務相はその後、議員や支持者が参加する保守党の年次総会で「謙虚さと悔しさ」をもって今回の決定を下したと表明。先週の激動を認めながらも、政府は成長を回復させ、新たな道を進まなければならないとの考えを示した。

トラス英首相は2日、内閣が最高税率の引き下げを知らされていたのかと問われ「知らされていなかった。クワーテング財務相が決定したことだ」とBBCに語っていた。

トラス氏はツイッターに投稿し「今後は高成長経済の構築に照準を合わせる。世界レベルの公共サービスに資金を提供し、賃金を引き上げ、国中で機会を創出する」と表明した。

「45%の最高税率廃止が英国を前に進めるわれわれの使命の妨げになっていた」とした。

政権発足から4週間もたたないうちに計画撤回を余儀なくされたことで、トラス、クワーテング両氏への風当たりが強まるとみられる。

クワーテング氏は同氏とトラス氏で今回の決断を下したと明らかにした。また辞任を検討していないと述べた。

ノルディアのチーフアナリスト、ヤン・フォン・ゲリッチ氏は「市場の観点からは正しい方向への良い一歩だ。市場がこのメッセージを受け入れるには時間がかかるが、圧力は緩和されるだろう」と語った。

パンミュア・ゴードンのチーフエコノミスト、サイモン・フレンチ氏は問題は税制改正ではなく、これに先立つ制度的な「焦土化政策」だと述べた。「英国のリスクプレミアムは、この問題が解決されない限り下がらない可能性が高い」との見方を示した。

減税の発表を受けて対ドルで過去最安値を更新したポンドは0725GMT(日本時間午後4時25分)現在、0.4%高の1.12ドル。英国債利回りは低下している。

ある保守党議員は匿名を条件に「驚くべき展開だ」とし、「すでにダメージは受けた。今はわれわれも無能に見えるだけだ」と述べた。

別の保守党関係者は、信頼と信用が失われたことで、保守党は「一日一日を生き延びる」モードに入ったと指摘。保守党は過去12年にわたり政権を担ってきたが、現トラス政権は9月6日に発足したばかり。

今回の政策転換でトラス氏とクワーテング氏に対する圧力はさらに増大するとみられる。クワーテング財務相は辞任すべきか、それとも解雇されるべきかとの質問に対し、ある保守党議員は「クワーテング氏は著しく弱体化した」と答えた。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米週間失業保険申請件数、政府機関閉鎖で増加=エコノ

ワールド

赤沢経済再生相とラトニック米商務長官が電話会談

ビジネス

9月国内企業物価指数は前年比+2.7%、前月から横

ワールド

対ロ追加制裁巡るトランプ氏の支持不透明、同盟国当惑
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 5
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 9
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中