ニュース速報

ビジネス

アングル:郵政社長、ロックアップ期間に「不規則発言」で波紋

2016年01月29日(金)21時13分

 1月28日、日本郵政の西室泰三社長(写真)が会見で、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の株式の追加売却に言及したことが波紋を呼んでいる。ロックアップ(株式売却禁止)期間中に経営トップが株式売却計画に踏み込んで発言するのは異例。2015年11月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 29日 ロイター] - 日本郵政<6178.T>の西室泰三社長が28日の会見で、ゆうちょ銀行<7182.T>・かんぽ生命保険<7181.T>の株式の追加売却に言及したことが波紋を呼んでいる。ロックアップ(株式売却禁止)期間中に経営トップが株式売却計画に踏み込んで発言するのは異例。

ただ、一見不用意ともとれる発言の裏に、株式の売却を急いで民間の金融機関との公平な競争条件を実現し、地銀などとの連携を円滑に進めたいとの本音も見え隠れする。

西室社長は会見で、記者からの質問に答えて「(ゆうちょ銀、かんぽ生命の株式の追加売却を)できるだけ早く実施したい」と語った。さらに売却スケジュールを来月中ごろには発表できると踏み込んだ。

郵政3社は昨年11月に上場し、今年5月1日までロックアップ期間となっている。西室社長の発言に法的な問題はないものの、同社は野村証券などグローバルコーディネーター4社と契約を結び、ロックアップ期間中は株式を売却をしないこと、同期間は処分計画を公表しないことなどを約束。西室社長の発言はこうした条項に抵触しかねない。

西室氏の発言で慌てたのが、同席していた事務方だ。幹部が西室社長に耳打ちし、西室社長の発言や来月に示す株式の売却計画はロックアップ期間を前提にしたものだと強調し、「火消し」に走った。

複数の関係者によると、2月中にゆうちょ銀とかんぽ生命の株式の売却計画が詳細に明らかになる可能性は低いという。

今回の異例の発言の背景には、西室氏の民間金融機関への配慮があるとの見方がある。日本郵政は、複数の地域金融機関と提携に向けて交渉を続けており「円滑に協力関係を築きたいとの思いから出たのではないか」(地銀関係者)というわけだ。

地銀協会などが求めている1つに、ゆうちょ銀とかんぽ生命の株式処分計画の明確化がある。昨年11月に上場したとはいえ、ゆうちょ銀、かんぽ生命の株式の約9割は日本郵政が保有し、その日本郵政の株式の9割は政府が握る。

政府の間接的な影響力が残る限り、民間金融機関と対等な競争関係にあるとは言えない。これが民間金融機関の論理だ。

「民営化委員会は答申を出したのであって、決めたわけではない。そこを取り違えてはいけない」――。西室社長は28日の会見で、ゆうちょ銀の預入限度額とかんぽ生命の契約限度額引き上げを求めた郵政民営化委員会の報告書に対し、こう述べた。

この発言にも、限度額引き上げに反発する民間金融機関への配慮がにじみ出ている、と語る関係者もいる。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バグダッドで女性ジャーナリスト誘拐、米旅券所持=警

ワールド

イラン外相、米特使から直接連絡も「交渉」に当たらず

ビジネス

米CB消費者信頼感、3月は小幅上昇 1年後インフレ

ワールド

仏伊、イラン作戦関与航空機の基地使用など拒否 スペ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 10
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中