ニュース速報

ビジネス

焦点:甘利氏辞任、海外勢は政策実行懸念 税収増活用に影響も

2016年01月28日(木)19時37分

 1月28日、安倍晋三内閣の重要閣僚としてアベノミクスの強力な推進役だった甘利明氏(写真左)が、閣僚辞任を表明した。右は安倍首相、国会で22日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日 ロイター] - 安倍晋三内閣の重要閣僚としてアベノミクスの強力な推進役だった甘利明氏が28日、閣僚辞任を表明した。これまでアベノミクスを評価して日本株を買ってきた海外勢からは、政策実行力の弱体化を懸念する声が浮上している。

また、甘利氏が力説してきた税収増の活用路線が影響を受けるのかどうか、政権内のバランスの変化にも注目が集まりそうだ。

甘利氏は、この3年間で大幅に日本株を買ってきた海外勢にとって「アベノミクスの宣伝役」(外資系証券の関係者)と映ってきた。実際、スイスで開かれていたダボス会議には多忙な安倍首相の名代として出席し、「新3本の矢」をアピールすることになっていた。

しかし、降ってわいたような金銭疑惑問題に関する質問に答える時間が多く、「かえって国際的にアベノミクスの印象を悪くした」(国内市場関係者)との声も聞かれる。

先の外資系証券の関係者は「アベノミクスの推進力が、甘利氏の辞任によって弱まることになるだろう」と述べ、海外勢による日本株売り/円買いにつながりかねないと予想している。

「政策推進力」について、実際にアベノミクスの具体的な政策企画や法案作成に関わってきた政府関係者が指摘しているのが、「金のかかる政策」が目白押しの「一億総活躍社会の実現」の財源問題だ。

甘利氏は、安倍内閣の新しい一枚看板であるこの政策を財政面から支援する仕組みを作り上げることに閣内で尽力していた。

子育て支援や介護離職ゼロといった社会保障関係の政策にかかる追加的な歳出増の具体的な財源は、まだ確保されていない。甘利氏は22日の経済演説で、その財源にアベノミクスの果実を充てる方針を盛り込んだ。

政府関係者の1人は「アベノミクス3年間での税収増の一部を税収の土台の厚みに加え、これから先も補正ではなく本予算に充てることで、新しい政策の財源にしようという考えの急先鋒が甘利氏だ」と述べる。

経済財政諮問会議でも「甘利ペーパー」を提出し、今年6月の骨太方針に税収増の一定程度を「一億総活躍」や成長のための歳出に回す方針を盛り込むことを打ち出した。

甘利氏は、その点に関連し「政府として明確な方針を策定」すると明言。財政再建を優先する財務省に対し、一定のルールの下に税収を歳出増に使うなら、野放図な使い方にはならないと説得しようとしていた。

昨年の骨太方針取りまとめの際も、歳出の目安をめぐって社会保障費の抑制額を年度ごとに0.5兆円と明記するよう求めた財務省に対し、甘利氏は3年間の目安にするよう要求。数値目標の明記を食い止めたと言われている。

複数の政府関係者は甘利氏の存在について、新3本の矢の財源問題に関する「突破のけん引役」と述べている。このため政府部内には、甘利氏の辞任が消費増税対策や格差是正・経済底上げを実現するための新たな対応策の作成においてマイナスに働くとの声が広がっている。中には「成長重視のアベノミクスにとって、相当な痛手になることは間違いない」と述べる政府関係者もいる。

というのも、税収増を新たな政策に活用しようという甘利氏の考え方には、根強い反対論も存在する。財務省高官の1人は、甘利氏らの主張が「税収と歳出の差が開くワニの口をどんどん大きくしている」と批判。「税収増を歳出増に充てるとしても、せいぜい1割が上限だ。あとは国債減額に使うのが筋」だと主張する。

政府内における税収活用派と財政再建派のバランスが、甘利氏の辞任によって財政再建派の方へ傾くのかどうか。霞が関の官僚は、今後の政権内の勢力図の変化に耳目をそば立てている。

(中川泉 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

ニュース速報

ビジネス

ムーディーズ、英格付けを「Aa2」に引き下げ EU

ビジネス

米12月利上げに予断なし、低インフレをなお懸念=ダ

ワールド

北朝鮮、水爆実験強硬なら分水嶺 米国は深刻に受け止

ワールド

OPEC内外の閣僚監視委、減産延長巡る決定時期で意

MAGAZINE

特集:対中国の「切り札」 インドの虚像

2017-9・26号(9/20発売)

中国包囲網、IT業界牽引、北朝鮮問題解決...... 世界の期待が高まるが、インドの実力と真意は不透明だ

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    北朝鮮外相「太平洋でかつてない規模の水爆実験」示唆

  • 3

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(後編)

  • 4

    ペットショップは「新品」の犬を売ってはいけない

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    日本はなぜここまで教育にカネを使わないのか

  • 7

    猫は固体であると同時に液体でもあり得るのか!? 

  • 8

    ラットの頭部移植に成功 年末には人間で?

  • 9

    世界初の頭部移植は年明けに中国で実施予定

  • 10

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(前編)

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 3

    iPhone新作発表に韓国メディアが呼ばれなかった理由

  • 4

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(後編)

  • 5

    AV強要の実態に、胸を締めつけられ、そして驚かされる

  • 6

    北朝鮮外相「太平洋でかつてない規模の水爆実験」示唆

  • 7

    ペットショップは「新品」の犬を売ってはいけない

  • 8

    ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由

  • 9

    トランプ、北朝鮮の「完全破壊」を警告 初の国連演…

  • 10

    ロヒンギャを襲う21世紀最悪の虐殺(前編)

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない「仲間」たち

  • 3

    ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由

  • 4

    北朝鮮問題、アメリカに勝ち目はない

  • 5

    iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

  • 6

    強気の北朝鮮 メディアが報じなかった金正恩の秘密…

  • 7

    イルカの赤ちゃんはなぶり殺しだった

  • 8

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 9

    ダイアナが泣きついても女王は助けなかった 没後20…

  • 10

    iPhone新作発表に韓国メディアが呼ばれなかった理由

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク試写会「ザ・サークル」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!