最新記事

中国

東京にもある、中国警察の「派出所」は何をやっているのか?

2022年10月24日(月)11時11分
ジョン・フェン
中国総領事館

イギリスの中国総領事館で暴行されたデモ参加者も標的?(10月16日) MATTHEW LEUNGーTHE CHASER NEWSーHANDOUTーREUTERS

<欧州26都市、北南米6都市、アジア5都市で中国警察が展開する「海外110」により、今年7月までに約23万人の在外中国人が「帰国の説得」に応じているという。人権侵害と国際法違反の「派出所」の狙いとは?>

スペインを拠点とする人権団体セーフガード・ディフェンダーズは9月に発表した報告書「海外110番」で、中国警察当局が世界各地に「派出所」を開設していると指摘した。

これまで30カ国の42都市に計54カ所を設けているという(報告書タイトルの「110番」は中国で警察に通報する際の電話番号)。

福建省福州と浙江省青田県の公安局が設置したこれらの派出所は、国境を越えた犯罪、特にオンライン詐欺を取り締まるという名目で開設された。

報告書は、中国警察当局の手法に問題があると指摘する。当局が標的にした在外中国人が「帰国の説得」に応じたという体裁を取り繕い、中国で法の裁きを受けるよう仕向けているという。

その過程で、標的の人物が帰国しなければ母国の子供たちから教育の機会を奪うとか、「連座制」の名目で家族や親族を処罰するなどと告げて、家族側から本人に帰国を「説得」するよう誘導している。

こうした方法によって昨年4月から今年7月までの短い期間に実に約23万人の在外中国人が「帰国の説得」に応じたと、中国当局が公表した。彼らは中国で処罰の対象になったと、報告書は述べている。

報告書によると派出所は、北米ではニューヨークに1カ所、トロント(カナダ)に3カ所。南米では、リオデジャネイロ(ブラジル)やブエノスアイレス(アルゼンチン)など6都市に設置されている。

地域別で最も多いのは欧州で、16カ国の26都市。なかでもスペインが4都市・9カ所で最多だ。アジアでは、東京やウランバートル(モンゴル)など5都市にある。

報告書によれば、これらの数字は福州と青田県の警察当局との関連が確認されたものだけ。実際には、中国の他の主要都市の警察と関係している派出所が数多く設置されている可能性があるという。

さらに報告書によれば、派出所は運転免許証の更新などの行政サービスを行うという理由で、在外中国人コミュニティーに組み込まれている場合も多い。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ロシア軍、港湾施設を攻撃 ウクライナ軍反転攻勢に進

ワールド

米FTCがアマゾン提訴、独禁法違反の疑い 資産売却

ワールド

中国アリババ、物流部門の菜鳥を分離し香港でIPOへ

ワールド

バイデン氏、ミシガン州でピケ視察 UAWの40%賃

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:日本化する中国経済

特集:日本化する中国経済

2023年10月 3日号(9/26発売)

バブル崩壊危機/デフレ/通貨安/若者の超氷河期......。失速する中国経済が世界に不況の火種をまき散らす

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    「可愛すぎる」「飼いたくなった」飼い主を探して家中さまよう子ヤギ、その必死さにネット悶絶

  • 3

    西日本最大級のグルメイベント「全肉祭」 徳島県徳島市にて10/20~10/22に第4回開催決定!

  • 4

    中国高官がまた1人忽然と消えた...中国共産党内で何…

  • 5

    「中流階級」が50%以下になったアメリカ...縮小する…

  • 6

    中央アジアでうごめく「ロシア後」の地政学

  • 7

    ゼレンスキー、念願の最強戦車「エイブラムス」がウ…

  • 8

    横暴中国、バリアーを張って南シナ海のフィリピン漁…

  • 9

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 10

    ウクライナが手に入れた英「ストームシャドウ」ミサ…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳への蓄積と「異常行動」が観察される

  • 3

    常識破りのイーロン・マスク、テスラ「ギガキャスト」に「砂」活用し他社引き離す

  • 4

    最新兵器が飛び交う現代の戦場でも「恐怖」は健在...…

  • 5

    これぞ「王室離脱」の結果...米NYで大歓迎された英ウ…

  • 6

    「ケイト効果」は年間1480億円以上...キャサリン妃の…

  • 7

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 8

    J.クルーのサイトをダウンさせた...「メーガン妃ファ…

  • 9

    ロシアに裏切られたもう一つの旧ソ連国アルメニア、…

  • 10

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 1

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 2

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 5

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 6

    サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…

  • 7

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 8

    墜落したプリゴジンの航空機に搭乗...「客室乗務員」…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ロシア戦闘機との銃撃戦の末、黒海の戦略的な一部を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中