最新記事

兵士

ウクライナ激戦地で、仲間の兵士たちの心を慰める「戦場のバイオリニスト」

2022年5月19日(木)18時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
モイジー・ボンダレンコ

@ukraine_world/Twitter

<現在も各地で戦闘が続くウクライナだが、美しい旋律で兵士たちの心を癒すバイオリン奏者の動画がSNSで話題となっている>

ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって約3カ月。ウクライナ軍による反撃により、ロシア軍が押し返されている地域も少なくないが、今も国内各地で戦闘が続いている。国内南部に位置するオデーサ(オデッサ)も、黒海に面する港湾都市という地理的な重要度もあり、ロシア軍から激しく攻め立てられている都市のひとつだ。

連日、爆撃を受けるそのオデーサのシェルター内で、バイオリンを演奏して仲間のウクライナ兵たちの心を癒している兵士がいる。巧みな演奏と美しい音色がSNSで話題になっているのは、プロのバイオリン奏者である23歳のモイジー・ボンダレンコだ。

彼に続いて歌やギター演奏が始まる

Zenger Newsによると、彼は故郷のドニプロペトロウシク州の村で少年時代から音楽を学び、キーウ(キエフ)国立文化芸術大学に入学したという。ロシア軍の侵攻が始まるまでキーウで暮らし、オーケストラに所属していたというボンダレンコは兵役に志願し、それまで持ったこともなかった機関銃を手に戦っている。

「最初は怖かった。当然、それまで戦争なんか経験したことはなかった。だが今はここで落ち着きを取り戻している」と、ボンダレンコはZenger Newsに語っている。「なぜなら、私たちの国が今まさに求めているものこそ、防衛者だからだ」

それでも爆撃の中で安眠することは難しい。それは、ともに戦う仲間たちも同じだ。だが彼が演奏を始めると、誰からともなく歌い始め、一緒にギターを弾く者もいる。彼が奏でるバイオリンの音色は、確実にウクライナ兵たちを勇気づけ、彼らに国を守るための力を与えている。

戦争が終われば、なるべく多くのコンサートを開きたいとボンダレンコは言う。そして、「ビールを飲みに出かけたり、サッカー観戦したり、楽しくリラックスできる日が来るよう、これを終わらせなければ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前月比+0.3%・前年比+3.4%

ワールド

米大統領選、バイデン氏とトランプ氏の支持拮抗 第3

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中