最新記事

ロシア

ついにロシアを見限った、かつての「衛星国」たち

Out of Russia’s Orbit

2022年5月19日(木)18時42分
エリカ・マラト(米・国防大学准教授)、ヨハン・エングバル(スウェーデン国防研究所)
ドネツク

ミサイルで破壊された住宅を視察するウクライナ軍関係者(ウクライナ東部ドネツク州) JORGE SILVAーREUTERS

<プーチン政権とロシアへの反感と抵抗を募らせる、「旧ソ連圏」の国々。今回のウクライナ侵攻には加担せず、餓死や粛清などソ連時代の残虐行為への責任も問う声が一般市民にも広がっている>

隣人と仲良くするのは難しいものだ。とりわけそれがロシアの場合には──。

ウクライナで戦争が始まって以来、かつて「衛星国」と呼ばれた国々が続々とモスクワの重力圏を離れようとしている。

足元でロシアの脅威を感じるモルドバやジョージア(グルジア)から、ロシアに借りのある中央アジアのカザフスタンまで、多くの国がウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアから距離を置き始めた。

ソ連時代の親密な関係を再検証する動きもある。かつてのソ連は「みな兄弟」と言っていたが、そんなのは嘘っぱちだと今は誰もが気付いている。みんな対等なんて話は、暴力でソ連が生まれた100年前から嘘だった。

そのソ連が崩壊してから30年を経た今、かつての衛星国の目に映る今のロシアは、単なる厄介な隣人だ。

カザフスタンは先月、5月9日の対ドイツ戦勝記念日の祝賀パレードを今年は実施しないと表明した。ロシアの、ウクライナへの派兵の要請を拒んだとも伝えられている。そしてアゼルバイジャンとの協力を深め、ロシア領を通らずに欧州へエネルギーを供給する計画だと発表した。カザフスタンの外務次官によれば、「仮に新たな鉄のカーテンができても、わが国はその裏側にいたくない」からだ。

ウズベキスタンでは、長らく外相を務めてきたアブドゥラジズ・カミロフが、クリミア半島やドンバス地方を含むウクライナの領土保全を支持すると表明したが、その後に更迭された。おそらく、ロシアからの政治的圧力があったのだろう。キルギスの外相も解任された。こちらもロシア支持を鮮明にしなかったことが理由らしい。

一方、モルドバはロシア産のエネルギーに依存しているが、ウクライナからの避難民を大量に受け入れている。そして女性大統領のマイア・サンドゥは、国内の沿ドニエストル地域における「親ロシア派」の動向を注視し、警戒していると語った。

ロシアがウクライナに侵攻した数日後、モルドバはウクライナやジョージアと並んでEU(欧州連合)への加盟を申請した。モルドバは沿ドニエストル地域を、ジョージアは南オセチアとアブハジアを、今はロシアに占領されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、イランとの攻撃の応酬続く レバノン南

ビジネス

米PCE価格指数、1月前月比+0.3%・コア+0.

ワールド

26年度予算案が衆院通過、審議時間は大幅減 参院で

ビジネス

英GDP、1月単月は横ばい イラン戦争で先行きに懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中