最新記事

日米首脳会談

日米首脳、中国を強くけん制 共同声明に台湾やウイグル明記

2021年4月17日(土)12時24分
日米首脳会談

日米両政府はワシントンで首脳会談を開き、台湾海峡や新彊ウイグル自治区の状況をはじめ、中国を巡る問題を中心に議論した。写真は4月16日、ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター//Tom Brenner)

日米両首脳は16日午後(日本時間17日未明)にワシントンのホワイトハウスで会談し、中国を強くけん制した。共同文書には、中国が軍事的な圧力を強める台湾について、海峡の安定が重要と明記。香港と新疆ウイグル自治区の人権状況に対する懸念も盛り込んだ。日本と経済的に関係の深い中国の今後の反応が焦点となる。

1月に就任したバイデン大統領が、外国の首脳と対面で会談したのは初めて。菅義偉首相と通訳を入れて2人だけで会談、さらに関係閣僚や補佐官を交え、計2時間半にわたって議論した。

最も重要なテーマとなったのが中国。不安定化する台湾情勢のほか、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新彊ウイグル自治区の問題も協議した。

両国は共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した」、「香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有」などと明記した。3月に東京で開いた外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の声明に続き、中国を明確にけん制した。

バイデン大統領は会談後の共同会見で、「自由で開かれたインド太平洋の未来を確かなものにするため、東シナ海や南シナ海、そして北朝鮮など、中国による挑戦に対抗するために協力していくことを確認した」と語った。その上で「日米同盟とわれわれが共有する安全保障を断固として支持することを確認した」と述べた。

菅首相は「台湾海峡の平和と安定の重要性は日米間で一致しており、今回改めて確認した」と説明。「新疆ウイグルの状況についても日本の立場や取り組みを説明し理解を得られた」と語った。議論の具体的な中身は明らかにしなかった。

共同声明には、日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)に対して米国の防衛義務が適用されることも盛り込んだ。「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対」するとした。

日米は、中国が南シナ海で人工島を建設したり、東シナ海で軍事的な動きを強めることに懸念を示してきた。米国はトランプ前政権時代から通商などを通じて中国をけん制してきたが、バイデン政権になってからは一段と圧力を強めている。中国を包囲するように、九州から沖縄、台湾、ボルネオを結ぶ「第一列島線」にミサイルを配備する計画も打ち出した。

菅首相は「東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試みと、地域の他者に対する威圧に、反対することでも(バイデン大統領と)一致した」と述べた。その上で、日本が防衛力を強化していく決意も伝えたことを明らかにした。

会談は北朝鮮問題も取り上げた。共同声明は「バイデン大統領は拉致問題の即時解決へのコミットメントを改めて確認」と明記。同時に「日米は安全と繁栄の共有のため日米韓の協力が重要である点でも同意」との表現も盛り込んだ。米国は対中けん制のためには日米韓の結束が必要と考えており、今回の会談を通じて日韓の関係改善を促した格好だ。

さらに両国は声明で、ミャンマーの軍・警察による一般市民に対する暴力行為を強く非難した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中