最新記事

教育

年々生徒数が増加する通信制高校が担う新たな役割

2021年4月8日(木)18時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

公立と私立を比べると、増えているのは後者だ。2015年と2019年を比べると、公立は6.7万人から5.5万人に減っているが、私立は11.4万人から15.1万人に増えている。近年の通信制の増加は、もっぱら私立によるものだ。

通信制への需要を見越した学校法人が、通信制の経営に乗り出しているのだろうか。私立の場合、生徒募集の範囲を定めない広域制をとることもできる。これに対して公立は、生徒募集の範囲が県内に限定される「狭域制」だ。

通信制というユニークな課程が、学費のかかる私立で寡占されるのは考え物だ。公立の通信制も、柔軟な運営をとって欲しいと思う。在籍生徒の年齢を見ると、公立の通信制では成人層も多い。<図2>は、通信制高校の生徒の組成図だ(2020年5月時点)。

data210408-chart02.jpg

通信制高校生の4人に3人は私立の生徒だ(横軸)。縦軸の年齢を見ると、公立校では4割が20歳以上の成人となっている。公立は、大人の学び直しにも寄与している。学費が安いことに加え、地域的に広く分散していることもその理由だろう。

通信制は高校教育の「おまけ」のように見られている節もあるが、今後はその比重を高めていくだろう。情報化社会、IT社会という時代の趨勢にも適っている。2020年5月時点では高校生の6.3%、16人に1人が通信制の生徒だ。

小・中学校で不登校状態にある子どもも、将来はどうなるのかと過度に思い詰めることはない。集団生活のない通信制の高校に行くのもいいし、独学で高校の学習を修め、高卒認定試験に合格して大学入学資格を得るのもいい。進む道(オルタナティブ)はいろいろある。教師の役割は、そうした情報を提供することだ。

<資料:文科省『学校基本調査』

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 9
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 10
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中