最新記事

新型コロナウイルス

自粛警察、梨泰院クラブ、セレブのSTAY HOME 新型コロナが暴く日米韓の国民性

2020年5月9日(土)21時14分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

新型コロナ対策の規制緩和直後にクラスター発生が明るみになった韓国ソウル市の梨泰院にあるクラブ KBS News / YouTube

<外出自粛の長期化で普段は目立たない、気にすることのない国民性が明らかに> 

日本では新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が延長されるなか、最近ネットでは「自粛警察」という言葉が登場した。これまで日本は、海外に比べると自粛も比較的緩やかムードだったが、それがここ数週間で一転してしまったように見える。

SNS上で今営業しているお店を非難したり、外出した人の名前をさらして炎上させたり、実際の店舗に脅迫めいた張り紙などで嫌がらせをしたり、県外ナンバーの車にいたずらをするなど、度を越した「自粛警察」の正義感には問題視する声も高まっている。

一度同じ方向を向くと決めたら、それ以外の人を皆で非難して統一しようとする国民性は、良し悪しはともかく、とても日本らしい傾向だと感じてしまった。

それでは他の国では一体どのような動きがあるのだろうか。

規制緩和→クラスター→営業停止、めまぐるしい韓国

今回の新型コロナのパンデミックで、様々なアイデアによる感染抑え込みで、世界から注目を集めた韓国。6日からは外出自粛緩和が発表されたが、8日には梨泰院にあるクラブで12人のクラスター発生が明らかになった。

情熱的な国民性をもつ韓国人は、抑制されるとその後に反動で爆発してしまう傾向がある。問題になったクラブは、実はまだ外出自粛が緩和される前から営業が行われ、1500人あまりの客が出入りしていたが、その大半はマスクをしていなかったという。

しかし、ここでも韓国は動きが早かった。ソウル市はすぐにこの感染源とされる男性の4月30日からの足取りを数分単位で克明に記録した行動一覧を公表、国民に注意を呼び掛けた。さらに、韓国政府は8日の午後8時から全国のクラブに1カ月の営業自粛を要請。9日午後にはパク・ウォンスンソウル市長が緊急会見でクラブを始めとした娯楽施設に「集合禁止命令」を発令、事実上の営業停止を命じた。

このフットワークの軽さは、韓国人のもう一つの国民性と言われる「パルリパルリ(=早く早く)精神」に繋がっている。韓国人はせっかちな人が多く、日韓の合同作業や交渉などをしていると特に感じることだが、トラブル回避のための慎重さよりも、プロジェクト達成のためとりあえずやってみる、という行動派が多い。パルリパルリ精神は、今回の新型コロナウイルスへの感染対処ではいい方向へ転がりを見せたのではないだろうか。

そんな韓国でも、自粛警察のような動きが無いわけではない。日本と違うのは、それが有名人に向けた取り締まりが多いことだろう。

newsweek_20200509_212553.gif

ソウル市が発表した梨泰院のクラブの感染者たちの行動経路 ソウル特別市ウェブサイトより

【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染36人確認 7日連続で100人以下
・ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果
・新型コロナ規制緩和の韓国、梨泰院のクラブでクラスター発生
・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(9日現在)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 9
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中