「イラン核合意破棄」は回避できるか 独英仏、米イラン仲裁に奔走
米国によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害を受け、イランは核合意について破棄同然の宣言を行った。これに対しドイツ、英国、フランスはなんとか合意を維持しようと外交に奔走している。写真は国際原子力機関(IAEA)本部前に掲揚されたイラン国旗。2019年9月撮影(2020年 ロイターeonhard Foeger)
米国によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害を受け、イランは核合意について破棄同然の宣言を行った。これに対しドイツ、英国、フランスはなんとか合意を維持しようと外交に奔走している。
イラン政府は5日、ウラン濃縮を無制限に進めると表明し、核合意からさらに逸脱した。しかし、イランは濃縮度をどこまで引き上げるか明言していない上、国連原子力機関(IAEA)の査察に協力することを確認した。EU高官らは、声明には明るい要素もあるとして、緊張緩和の余地を見いだしている。
一方、EUは10日に緊急外相理事会を開き、核合意維持に向けイランに圧力をかける方策についても協議する。国連による対イラン制裁の再発動につながる可能性もある。
欧州の高官は「核合意は死んだも同然だが、われわれは(核の)拡散スピードを抑えるために全力を尽くし、守るべきものは守るよう努力する」と話した。
ドイツ外務省の報道官は、核合意はまだ破棄されておらず、イランとの対話は続いていると指摘。「合意維持がわれわれの目標だ」と述べた。
英独仏には事前通告なし
2018年にトランプ米政権が一方的に核合意を離脱して以来、英仏独は仲裁役の立場に立たされ、イランに合意維持を説得する一方で、米国に向けてはイランにだまされないタフな同盟諸国ぶりをアピールしている。
イランがウラン濃縮宣言を行った後、メルケル独首相、マクロン仏首相、ジョンソン英首相の3人は共同声明で「差し迫った緊張緩和の必要性」を訴えた。
ソレイマニ司令官の殺害を受け、中東地域の緊張は過去10年以上なかったほど高まっており、仲裁は困難さを増している。
トランプ米大統領から司令官殺害の事前予告がなかっただけに、欧州側の憤まんはやる方ない。
核専門家は、イランの声明は交渉の余地を残すものだとみている。ウラン濃縮度を20%以上に引き上げるとの警告を見送った点と、IAEAの査察受け入れ継続を表明した点に希望が持てるという。イランは2015年の核合意前に20%の濃縮に成功した。20%を達成すると、核兵器級の90%の高濃縮ウラン製造が容易になる。
国際戦略研究所の核不拡散専門家、マーク・フィッツパトリック氏はイランの声明について「思ったより穏便で、交渉の余地を残している」と語る。ただ「イランが無制限のウラン濃縮を宣言した点は不吉だ。実際にどのような行動に出るか見極める必要がある」とした。