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百田尚樹現象

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THE INSCRUTABLE MONSTER

2019年6月27日(木)17時00分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

「対談を提案したのは僕ですね。彼の思想傾向はツイッターで分かっていましたからね。この対談で、2人の信頼関係は増したと思いますよ」

花田が図らずも明かしたのは、百田の右派論壇デビューのきっかけがツイッターだったという事実だ。

花田は、百田を政治言論に引き入れた人物がもう1人いたことを明かした。故・三宅久之だ。元毎日新聞記者、晩年は政治コメンテーターとしてテレビで活躍していた。三宅は安倍再登板に向けて、右派メディアの人脈をフルに使って「運動」をしていた。三宅が代表発起人となり、12年9月の自民党総裁選を前に「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志による緊急声明」を発表した。その発起人の中に百田の名前があった。

百田自身は「自分が政治に影響力を持ちたいと思ったことはない」とインタビューで答えていたが、花田の手による論壇デビューを境に、ベストセラー作家は右派の輪の中に入っていく。以降、右派系メディアでの仕事や政治的な発言、歴史認識についての発信の場は急速に増えた。安倍政権誕生とともに13年にはNHK経営委員にも就任した。書評だけでなく、
12年7月に名物コーナー「おやじのせなか」で百田を取り上げていた朝日新聞も、この頃から批判のトーンを強めていく。

花田は「百田の本質は小説家であり、学者ではない」と言う。歴史認識についても、例えば新しい史料を発掘しての新解釈、というような「新しさ」はない。だが、「百田さんは何より語り口が面白いし、見事ですよ。ユーモアもあるしね」。ここでもポイントは語り口だった。

ツイッターで百田を発掘した花田だが、彼のツイッターには苦言を呈していた。「あそこで激しいことは書かないほうがいい。だって余計な波乱とか、炎上を招くでしょ。言わずにはいられないんでしょうけどね」と打ち明ける。

もっとも百田の舌禍癖くらいで右派論壇は揺るがない。花田たちの「支え」もあってカムバックから7年、安倍一強時代は続く。出版業界を見渡せば、売れるのは右派系の本や雑誌ばかりだ。すっかり勝ち組ですねと話すと、花田は首を振った。

「こういう雑誌はメディアでは少数派。全く売れているとも思わないですよ。だって朝日新聞は毎日何百万部と発行しているんですよ。それに比べたら、部数なんてまだまだでしょう。百田さんだって朝日に比べたら少ないもんですよ。だからこそ僕は発言の場をつくっていきたいんです」

花田はここで、重要なキーワードをぽろっと口走っていた。取材時にはぼんやりとしか見えていなかったが、彼らを結び付けているのはイデオロギーだけではない。あるメンタリティーにあるということが後々、分かってくるのだった。

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