最新記事

北朝鮮情勢

朝鮮半島で戦争が起きれば、中国とロシアはアメリカの敵になる

2017年12月19日(火)19時05分
トム・オコナー

軍事演習に参加する中国・人民解放軍の兵士たち China Military Online/Feng Yu

<北朝鮮との緊張を勝手にエスカレートさせるトランプ米政権。3月までに戦争が起こってもおかしくないと言われる状況に、中国とロシアが対米で手を組んだ>

朝鮮半島で戦争が起こった場合を想定し、アメリカへの攻撃計画を進めている可能性があることが、2人の中国軍関係者の発言で明らかになった。

中国人民解放軍南京軍区の元副司令官(中将)の王洪光(ワン・ホンコアン)は12月16日、「今から来年3月までの間に、いつ朝鮮半島で戦争が起こってもおかしくない」と警告した。中国共産党機関紙人民日報系の環球時報が北京で主催した会議での発言だ。環球時報は翌日、王の発言を大々的に報じ、軍事専門家の宋忠平(ソン・チョンピン)のコメントを付け加えた。「中国に脅威を与えるなら、アメリカとの武力衝突もあり得る」

「中国は、朝鮮半島有事に備える必要がある。そのためには、中国東北部に動員をかけるべきだ」と王は16日の会議で言った。「戦争を始めるためでなく、防御的な意味での動員だ」

人民解放軍のロケット軍の前身である「第2砲兵」に所属していた宋は、環球時報の取材に対し、中国の主権を米軍が侵した場合に報復するための危機管理計画も「防御」目的に含まれる、と語った。

どこまでも拡大しかねない戦火

宋はまた別の取材で、中国とロシアが12月11日に北京で行ったミサイル防衛演習について、ドナルド・トランプ米大統領が命じる中ロ両国への軍事攻撃を想定したものだと言った。トランプは今年1月の就任以降、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との対立を激化させる一方だ。トランプ政権は北朝鮮の核保有を認めない立場だが、北朝鮮は金政権崩壊を狙うアメリカの攻撃から自衛するために核が不可欠だと主張している。中国とロシアはこれまで、北朝鮮による核・ミサイルの開発を非難するアメリカに同調してきたが、アジア太平洋地域に米軍の影響力が拡大することには断固反対だ。

「中ロが合同演習を行う場合の仮想敵国は、中ロにとって本物の脅威となる弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方を保有するアメリカだ」と、宋は香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストに語った。「中国とロシアには、今回の合同ミサイル防衛演習を戦略的な対米抑止に利用したい思惑があった」

韓国に配備された米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)は、迎撃用から攻撃用に簡単に転換できるとみられており、何としても撤去させたい気持ちは中ロ共通だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中