最新記事

電気自動車

米自動車大手「金食いEV」開発資金はピックアップトラックとSUVで調達

2017年10月31日(火)09時33分

10月27日、各国が化石燃料車の販売を将来的に禁止する方針を相次いで打ち出し、自動車業界は岐路に立っている。写真はミズーリ州のフォードのピックアップトラック工場で2015年5月撮影(2017年 ロイター/Dave Kaup)

各国が化石燃料車の販売を将来的に禁止する方針を相次いで打ち出し、自動車業界は岐路に立っている。しかし、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)など電気自動車(EV)開発で出遅れた大手メーカーは、米国でのピックアップトラックの販売好調が生み出す利益がテスラなどのEVメーカーを追撃する資金源となっている。

テスラは、年50万台という野心的な販売目標を掲げている。もっとも伝統的なメーカーならほとんどクリアしたような生産面のいくつかの問題を抱え、今年上半期決算は6億6670万ドルの赤字となった。アナリストは11月1日に発表の第3・四半期決算も3億8040万ドルの赤字を見込んでいる。

EVは「金食い虫」であり、大手メーカーがこれまで開発に及び腰だったのはそのためだ。しかし規制当局や消費者からEVの品ぞろえの充実を求める圧力は高まっている。こうした状況下では、ピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)がたたき出す利益は、大手メーカーがEVメーカーと競争する上で有利な武器となりそうだ。

フォードは26日、ピックアップトラック「Fシリーズ」の第3・四半期の平均販売価格が2800ドル上がり4万5400ドルになったと発表した。幅広いバリエーションを有するFシリーズは、1─9月の販売台数が前年同期比11%増の65万8636台となった。

GMのバーラ最高経営責任者(CEO)は24日、第3・四半期に北米事業の利益率が8.3%となったのは、トラック部門の利益率改善が主な要因の1つだと述べた。バーラCEOは数四半期以内に自動運転EVを配車サービス業者向けに投入する計画を明らかにしており、GMの株価は年初来で30%近く上昇している。

GMは今年のフリーキャッシュフローを60億ドル程度と見込んでいる。これは当初予想を10億ドル下回る水準だが、2023年までにEVを20車種以上追加し、株主に70億ドルを還元するという計画を進めるのに十分な水準だ。

GMは8年前の破綻から立ち直り、今では利用可能な資金が173億ドルのキャッシュを含めて、計314億ドルに達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中