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上海協力機構という安全保障同盟に注目すべき理由

2017年8月14日(月)11時00分
ハリー・ブロードマン(本誌コラムニスト、ジョンズ・ホプキンズ大学上級研究員)

中国は一帯一路の一環として、「中国・パキスタン経済回廊」なる大規模なインフラ整備プロジェクトを計画しているが、インドのことは完全に無視してきた。このためインドは最近、日本と組んで「アジア・アフリカ成長回廊」を整備する計画を発表した。

その背景には、経済面における中国とインドの競争激化がある。中国経済が一時のような勢いを失う一方で、インド経済は持ち直し、今や成長ペースでは中国を上回る。その競争は今後も収まる気配はない。

もしかすると、今年のSCO首脳会議で最も注目すべき出来事は、イランもオブザーバーから正式加盟国に昇格する見通しが高まったことかもしれない。早ければ来年にも実現する可能性があり、そうなればSCOは太平洋から中東までをカバーする巨大機構になる。

それだけではない。イランはペルシャ湾岸のアラブ諸国からのけ者にされているが、SCOに加盟すれば、アラブ諸国に対して大きな競争的優位を得る。それは中東の盟主の座をめぐるサウジアラビアとの争い、つまりは未来の中東の安全保障地図にも影響を与えるだろう。

SCOは発足から20年間は地味な存在だったが、ここへきて急速に拡大し、成熟しつつある。NATOなど世界の地域安全保障同盟は、その進化にもっと注目したほうがよさそうだ。

【参考記事】貿易戦争より怖い「一帯一路」の未来
【参考記事】ロンドン直通の「一帯一路」鉄道で中国が得るもの

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[2017年7月11日号掲載]

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