最新記事

2016米大統領選

トランプに「屈服」したライアン米下院議長の不安な将来

2016年6月3日(金)17時10分
マシュー・クーパー

Joshua Roberts-REUTERS

<次の大統領候補とも目されていた米共和党下院議長のライアンが、遂にトランプへの支持を表明。これで共和党の「反トランプ」運動は一握りの大物政治家を除いて消滅した。トランプの行状を弁護する立場になったライアンの今後は?>

 米共和党のポール・ライアン下院議長は今週、大統領選で共和党の候補指名を確実にしたドナルド・トランプへの支持を表明した。

「秋の本選でトランプに投票する」と、ライアンはウィスコンシン州の地元紙に寄稿したコラムで明らかにした。何とも感情のこもらない、とりとめのないこのコラムでライアンは、自分とトランプとの間に様々な相違があることを認めた。同時に自分が政策課題としている減税や規制緩和について、トランプなら推進するだろうと書いている。

反トランプ運動の終わり

「これらの政策(減税や規制緩和)を実現するには、法案に署名する意思がある共和党の大統領が必要だ」と、ライアンは述べている。さらに連邦最高裁の判事の人選についても意見は一致しているという。

 下院共和党を率いる有力議員ライアンの態度表明で、トランプの指名獲得阻止を目指した「#NeverTrump(ネバートランプ)」運動は消失することになる。トランプには絶対に投票しないと公言しているのは、2012年に副大統領候補のライアンと共に本選を戦ったミット・ロムニーなど、一握りの共和党の大物政治家だけだ。共和党員は今ぞろぞろとトランプの旗の下に集まっている。ライアンは反トランプ派の最後の砦だった。

【参考記事】#ネバートランプ! 共和党主流派の遅過ぎた?逆襲
【参考記事】米共和党、トランプ降ろしの最終兵器

 なぜライアンはトランプ支持を決めたのか? ライアンの見解を額面通りに受け取れば、確かに来年以降に議会で審議される政策課題に、トランプなら合意するからだろう。

 移民問題や社会福祉などその他の問題に関して、ライアンはトランプとの間に意見の相違があり、すり合わせをしなければならないことを認めている。「我々の間に相違があることは隠すことではない」とライアンは述べている。「必要なら忌憚なく話し合うつもりだ」。だからと言って、トランプの副大統領候補になるというわけではないようだ。

【参考記事】「おバカで結構」米共和党綱領の呆れた中身

 しかし本当の問題は、結局ライアンがトランプを支持せざるを得なかったことだ。もし共和党の下院議員がトランプに乗っかれば、ライアンは下院議員やその他の共和党員とまったく同調しないわけにはいかない。トランプを支持しなければ、間違いなくライアンは困難に直面する。特にトランプが本選で勝利して大統領になればそれこそ大変だ。トランプがこれまで何か些細なことでも仕返しをし忘れたことがあっただろうか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中