最新記事

ニュースデータ

未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

2016年5月24日(火)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

 ちなみに日本では離婚のインパクトも男女でかなり差異が生じている。戦後の離婚率と自殺率の推移を見ると、2つのデータの相関関係は男女でかなり様相が違っている。

 <図2>は、1950年から2014年までの時系列データをもとに作成した、離婚率と自殺率の相関図だ。最新の2014年のドットは、赤色で示している。

maita160524-chart02.jpg

 男性は、離婚率が高い年ほど自殺率も高い傾向にあるが、女性は逆になっている。相関係数(-1から+1までの値をとる測度で、前者に近いほどマイナス、後者に近いほどプラスの相関が強いことを意味する)を計算すると、男性では+0.7599,女性では-0.4802で、両方とも統計的に有意(相関関係があること)だ。

 男性の場合、支える目的や情緒安定の場の喪失という意味で、離婚(家族解体)は自殺のきっかけになり得るが、女性は必ずしもそうではないことが示唆されている。女性の場合は、家庭の諸々の束縛から解放されるという点で、離婚は自殺の抑止因になっていることも考えられる。

【参考記事】日本男子「草食化」の背景にある経済格差

 いみじくもフランスの社会学者デュルケームは、『自殺論』の中で次のように述べている。「結婚生活は、女子が自分の運命を耐えがたく感じたときでも、その運命を変更することを禁じている。したがって、その規則(筆者注:離婚の抑制)は、女子にとっては、これといった有利さも与えられない一つの拷問なのだ」(宮島喬訳『自殺論』中公文庫〔1985年〕)と。

 19世紀のヨーロッパ社会の観察に基づく所見だが、現代の日本でも、結婚生活が女性にとって窮屈なものであることは否めないだろう。

 未婚男性の「不幸」感が未婚女性と比較して著しく高いというデータは、日本の家族の意味合いが男女で異なっていることがうかがわれる。それは、著者の過去の記事でこれまでにも指摘していることだが、日本社会の性役割規範(ジェンダー観)がいまだに根強いことの証左に他ならない。

<資料:「第6回・世界価値観調査」(2010~14年)
    厚生労働省「人口動態統計」

筆者の記事の一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン経済は26年に回復、少なくとも5%成長達

ビジネス

香港のステーブルコイン発行許可、3月に第1陣付与へ

ビジネス

大和証G、10─12月期の純利益は0.4%減 リテ

ワールド

アングル:米圧力で燃料不足深刻化 キューバ、生活防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中