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BLMの巨大なうねりは警察ドラマに変化をもたらす

The Future of Cop Shows

2020年09月09日(水)18時10分
ジャニス・ウィリアムズ

MICHAEL YARISHーCBS/GETTY IMAGES

<警官はヒーロー、黒人は犯罪者予備軍──そんな紋切り型を排して、より繊細な表現へ>

アメリカ中に広がったBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動のうねりは、警察もののテレビドラマにも影響を及ぼすことになりそうだ。

ドラマに登場する警察官と地域社会との関わりは、より繊細に描かれるようになるかもしれない。容疑者の描き方もこれまでのような紋切り型にはならず、ドラマの中の警察組織はBLM運動のデモ参加者が求めるような改革を反映していくかもしれない。

変化がどの程度のものになるかは分からない。だが少なくとも、米CBSがこの秋に新シーズンを放送する『NCIS〜ネイビー犯罪捜査班』や『ブルーブラッド〜NYPD家族の絆〜』などの作品に変化がもたらされるのは、ほぼ確実だ。CBSは公共の安全確保について行政組織や警察に助言する専門機関「21CPソリューションズ」と契約を結び、警察・法律ドラマの制作に協力を仰ぐことになったからだ。

バラエティー紙(電子版)が8月12日に報じたところによれば、21CPはCBSに警察幹部や法律の専門家、研究者や弁護士などを派遣。ドラマが警察の活動を正確に描いているかどうかだけでなく、警察官の地域社会に対する考え方や関わり方といった細かなさじ加減が求められる描写についてもアドバイスすることになる。

「警察もののドラマが視聴者に大きな影響を与えていることは言うまでもない」と語るのは、21CPの共同経営者の1人で、オバマ政権時代に司法省で地域の警察サービス担当局長を務めたロナルド・デービス。「私たちが抱える専門家集団は、警察活動の現実を過去にさかのぼって理解する手助けができる。警察の活動方針が地域社会に、とりわけ有色人種の多い地域にどのような影響をもたらしてきたかも伝えられるはずだ」

ドラマ革命が癒やしに

さらにデービスは、プロデューサーや脚本家がドラマの登場人物に深みを持たせたいときにも、21CPのアドバイスが役に立つと言う。「警察官を最初から無条件にヒーローとして設定するのではなく、現実の警察官が地域社会でどういう存在なのかを理解し、特に黒人が多い地域で警察の活動がどう見られてきたかを考えて、バランスのいい表現に落とし込むことが重要になってくる」

デービスの狙いどおりになれば、CBSドラマの警察官の描き方は変わるかもしれない。同時に、黒人の多い地域で住民が犯罪を目撃しても、かえって犯人扱いされるのではないかという不安から通報をためらうといった場面の描写にも、変化が出るだろう。

今はまだCBSのように、21CPなどの団体に助言を求めるテレビ局は数少ない。CBSは全米黒人地位向上協会(NAACP)にも、番組構成やスタッフの多様性向上に関してアドバイスを求めている。だが30年以上にわたり治安を守る現場で働いてきたデービスは、CBSとの協力関係が他のテレビ局にも波及することを期待している。

デービスには強い思いがある。「1人の黒人男性として、黒人の子供の父親として、そして黒人として警察官に理由なき職務質問を何度もされてきた経験」から、CBSとの協力関係のような例が増えことを、彼は願っている。

「絶大な影響力を持つメディアが警察を取り巻く現実を理解する助けになれば、この国の癒やしになるはずだ」


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