最新記事
研究

113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに

Ginger Cat Mystery Solved

2025年3月6日(木)17時29分
トム・ハワース(自然・科学担当)
くつろぐ茶トラ猫

茶トラ猫や三毛猫のオレンジ系の毛色を作り出す遺伝子の変異は猫の性別とも結び付いている VIKTORIYA SKORIKOVA/ISTOCK

<これまで謎だったオレンジの毛の仕組み──日米の研究者がカギを握る「オレンジ遺伝子」を特定した>

茶トラ猫の鮮やかなオレンジ色の毛並みとサビ猫のオレンジ色がかった茶色と黒が複雑に交ざる模様──その仕組みを解き明かす遺伝子の秘密は1世紀以上もの間、科学者と猫好きを悩ませ続けてきた。

1912年に初めて理論として提唱されたこの謎の遺伝子的カギが、日本とアメリカの科学者チームがそれぞれ昨年11月に公表した研究によって、ついに特定された。


独立した2つの研究はオレンジの毛色に関わる遺伝子、通称「オレンジ遺伝子」の正体を突き止めた。ARHGAP36だ。この発見は113年前の仮説を証明するだけでなく、色素に関する新たな生物学的経路を明らかにしている。

1912年、アメリカの遺伝学者クラレンス・クック・リトル(C. C. Little)は、猫の毛色の遺伝をX染色体と結び付ける画期的な説を提唱した。

リトルの仮説によれば、オレンジの毛色を決めるのはX染色体にある遺伝子の変異だ。茶トラ猫がほぼオスばかりで、サビ猫がほとんどメスなのは、これによって説明がつく。

つまり、性染色体がXYのオスの場合、毛色はオレンジ色になるか、ならないかの2択しかない。一方、性染色体がXXのメスは、それぞれのX染色体の遺伝子を受け継ぐ可能性があり、サビ模様になる。

2つのX染色体に「オレンジ遺伝子」が必要なため、茶トラのメス猫は比較的まれにしか生まれないという。

経営
「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑むウェルビーイング経営
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中