最新記事
ペット

私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした

The Story Goes On

2025年2月20日(木)15時30分
サノバー・サバ(アブダビ在住エッセイスト)
ひょんな出会いから絆を深めてきた筆者とジーニー COURTESY OF SANOBAR SABAH

ひょんな出会いから絆を深めてきた筆者とジーニー COURTESY OF SANOBAR SABAH

<外国暮らしで「自分の家」がなかった私がジーニーとの出会いによって帰る場所を見つけた>

それは2023年10月の静かな早朝だった。仕事に出かけようとして、歩道でじっと座っている茶トラ猫を見つけた。1階の住民たちが飼っている猫の1匹だと思っていた。

ところが夕方も猫は同じ場所で、同じ姿勢でいた。猫の保護活動をしている友人に聞くと、「捨て猫が飼い主の迎えを待っているのでは」との返事が。かすかな不安が確信へと変わり、気分が沈んだ。


私が暮らす中東は、多くの外国人家族にとってつかの間の滞在地だ。小さくてかわいいペットを飼っても、成長して手がかかるようになったり国外への引っ越しが決まったりすると、捨ててしまうケースは珍しくない。

その週末、私が車から食料品を降ろしていると茶トラが駆け寄ってきた。うちの飼い猫用の餌があったのであげると、それ以来、茶トラは毎晩やって来て餌をねだるようになった。半年後、私は彼女を「ジーニー」と名付けた。

長い間、いつもジーニーは怯えた様子で駐車場の車の下に隠れていた。毎日窓からその姿を見るたび涙が流れ、胸が張り裂けそうになった。

私がジーニーの家になる

だが、すぐにジーニーは近所の人気者になった。みんなが彼女の魔法にかかったのだ。警備員は挨拶をしに立ち寄り、お年寄りは夕食時にジーニーがいないと気にし、子供たちはおやつを持ってくるようになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

G7、中東情勢が最重要議題に 緊張緩和求める共同声

ワールド

トランプ氏、イスラエルのハメネイ師殺害計画を却下=

ワールド

イスラエル・イランの衝突激化、市民に死傷者 紛争拡

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中