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JICA’s Smart City

小型EVやアプリで導くスマート交通戦略が、バンコクの渋滞を解消し市民のQOLまで向上!?

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2021年8月16日(月)16時05分
文:久島玲子 ※「JICA Magazine」2021年8月号より

実証実験START! 4つのアプローチで、QOLの向上を目指す

実証実験には、日本のベンチャー企業FOMM(フォム)が開発し、タイで生産されている次世代型電動ミニカーを導入。4人乗りで全長は約2.5メートルと通常タクシーの半分弱のサイズ。道路占有面積が小さいので効率性が高まる。タイと日本のデザイナーが外装をデザイン。電動化で環境負荷を低減するほか、利用者のリクエストに応じて運行し、安全・快適性を高めた新たな移動手段としての可能性を探る。実施期間は2021年7月から約2年間を予定。

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■1.スマート交通手段の実験

スマートフォンを片手にアプリで車の手配をする利用者。アプリは、タイで最も普及しているLINEをベースに、対話式で予約ができるように作成された。

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■2.シミュレーションモデルで将来予測

土地利用情報に車や人の流れ、公共交通機関の状況などをマッピングし、そのデータを積み重ねることで将来シミュレーションが可能になる。このシミュレーションを元に、渋滞の回避や解消につながる仕事の場所、移動の時間帯、手段やルートを示すことができる。

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■3.人+AIがQOL/幸福度を評価

交通状況や風景の写真、街のデザインなどを見たときの人の快・不快の感覚を数値化し、それをAIに学習させるシステムを構築。QOLに基づいた土地の利用や交通システムの開発につなげる。歩きやすさを測るために仮想現実(VR)のツールも活用。

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■4.時空間データの見える化

中部大学が開発した、多様な情報を統合できるデジタルアースシステム上に1~3の研究結果を載せ、それぞれの成果を可視化。市民、交通事業者、政府などが情報や認識を共有しやすくなる。スマート交通戦略を立案するにあたり合意形成や意思決定がスムーズに。

◇ ◇ ◇

林 良嗣さん(HAYASHI Yoshitsugu)
●研究代表者
中部大学卓越教授、持続発展・スマートシティ国際研究センター長。前・世界交通学会会長。長年、経済の発展段階と交通との関係を研究した経験と知識から、本研究プロジェクトのリーダーを務める。

安藤亥二郎さん(ANDO Gaijiro)
●JICA 調整員
2004年からJICA本部、ベトナム、ブータンでJICAプロジェクトに関わる。20年11月からバンコクに駐在し、本プロジェクトの運営管理や、タイと日本側メンバーのコミュニケーションのサポート、広報などを担当。


国民のための経済成長を進めるThailand4.0
タイ政府は、2016年に長期経済計画としてThailand4.0を発表した。1980年代後半から続いてきた重化学工業中心の経済成長に代わり、今後20年かけて経済社会のデジタル化を推進し、付加価値創造社会への移行を宣言。「Economy for People」を掲げ、人々の幸福度を上げるための経済成長を目指す。次世代自動車や農業、医療ツーリズムなどの既存産業と、ロボット、デジタル産業などの未来産業、両者を強化・育成する計画だ。

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※「JICA Magazine」2021年8月号は「スマートシティ 素敵な街のつくり方」特集。都市の課題解決を目指すスマートシティの概念や、未来の街をめぐる10のキーワード、さらにはタイのバンコクだけでなく、ケニア、バングラデシュ、デンマークなど各地の街づくりを取り上げる。下記サイトにて公開中。

https://www.jica.go.jp/publication/j-magazine/2108/index.html

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●「JICA Magazine」2021年8月号
https://www.jica.go.jp/publication/j-magazine/2108/index.html