最新記事
AI

Amazon、OpenAIと380億ドル契約──AWS再浮上へ追い風

2025年11月6日(木)17時20分
写真はオープンAIとAWSのロゴと、ロボットハンドのイメージ。11月3日撮影。REUTERS/Dado Ruvic

写真はオープンAIとAWSのロゴと、ロボットハンドのイメージ。11月3日撮影。REUTERS/Dado Ruvic

米電子商取引(EC)大手アマゾン・ドット・コムは3日、対話型生成人工知能(AI)「チャットGPT」を手掛けるオープンAIとの380億ドル規模の契約を結び、クラウドサービス「AWS(訂正)(アマゾン・ウェブ・サービス)」を提供すると発表した。これは競合企業に市場シェアを奪われ、大規模障害にも見舞われたアマゾンのクラウド事業にとって、追い風となりそうだ。

アマゾンは利益率の高い「AWS(訂正)」でクラウドコンピューティング業界を長年リードしていたものの、ここ数年はAIサービスでマイクロソフトやグーグルの親会社アルファベットに大型契約を奪われていた。

シナジー・リサーチ・グループのデータによると、アマゾンのクラウド部門における市場シェアは2022年、チャットGPTが登場する数カ月前の時点では34%だったが、25年9月には29%に低下している。

投資家の間では、アマゾンは大規模言語モデル(LLM)の導入が遅れ、チャットGPTのような消費者向けチャットボットを提供できていないなど、AI競争で後れを取っているとの見方が多かった。

ただ最近では、アマゾンの対AI分野投資も加速しつつある。10月には110億ドルを投じた計算クラスタープロジェクト「レーニア」の立ち上げを発表。自社開発の半導体「トレーニウム」を組み込んだ米国内のデータセンターで、新興企業アンソロピックのAIトレーニングを行うというものだ。

今回のオープンAIとの契約は、先週発表された好調な四半期決算とともに、AWSが勢いを回復しつつある状況を示している、とアナリストや投資家は指摘した。

クイルター・チェビオットのアナリスト、マンタ・バレチャ氏は「今回の契約は、オープンAIが他のクラウド事業者とこれまでに契約した案件に比べれば小規模だ。ただ、計算処理能力の開発に今後数年間で数兆ドル規模を投資する企業と提携を組もうとするアマゾンの試みとしては、重要な第一歩となる」と述べた。

アマゾンの株価は今回の契約発表後に5%上昇し、史上最高値を記録。それ以前は、新興AI企業との数千億ドル規模のクラウド契約を手掛かりに急騰した他のテック大手株からは遅れを取る形となっていた。

マイクロソフトは先週、オープンAIとの組織再編を巡る新たな合意に基づき、クラウドサービス「Azure(アジュール)」について2500億ドル規模の契約を締結したと発表した。オラクルも9月、オープンAIと総額3000億ドルの契約を締結。グーグルはアンソロピックとの数百億ドル規模の半導体関連契約など、複数企業との事業提携を進めている。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど

ワールド

リビア軍参謀総長ら搭乗機、墜落前に緊急着陸要請 8

ビジネス

台湾中銀、取引序盤の米ドル売り制限をさらに緩和=ト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中