コラム

今なぜ、「オバマ罷免」なのか?

2014年07月29日(火)10時37分

 ここ数週間、アメリカでは共和党によるオバマ大統領への攻撃が激しくなっており、一旦は「オバマ訴追」という運動が起きたのですが、最近ではオバマを「罷免(インピーチ)」しようというスローガンまで出てきています。

 罷免というと穏やかではありませんが、では、オバマ大統領には例えばウォーターゲート事件のニクソン、モニカ騒動の際のビル・クリントンのような悪質な行為があって国民的な議論として「罷免」が真剣に考えられているのでしょうか? そして実際に罷免される可能性はあるのでしょうか?

 答えは「ノー」です。

 確かにオバマの人気は全くのダメダメですが、別に国民に対する背信行為があったとは考えられていません。そもそも罷免に関して、野党の共和党は下院の過半数は確保していますが、上院では今年11月の中間選挙で同数もしくは逆転する可能性はあるものの、罷免に必要な3分の2の議席を獲得するのは全く不可能です。この件について、今の情勢下で民主党から造反が出るとも思えません。

 では、全く可能性がなく、目立った背信行為もないのであれば、なぜ「罷免論」が出てくるのでしょうか?

 それは、中間選挙へ向けた全国キャンペーンの材料が他にないからです。

 例えば、オバマ批判の大きな理由として、南部国境における子供の難民(不法移民)の問題があります。共和党はオバマが「移民に甘いメッセージを送った」という失策の結果だとしていますが、では共和党に「防止策」があるのかというと基本的にはありません。

 また移民政策そのものに関しても、現在の共和党の新世代の政治家は「不法移民の強制退去」などを叫ぶことはなく、限りなくオバマに近い政策を持っています。つまり、政策議論として「異なった選択肢」は持っていないのです。

 国際情勢もそうで、ウクライナにしてもガザにしても、あるいはイラクにしてもシリアにしても、共和党で個別の政策論として「自分は地上軍を投入する」とか「断固イスラエルを支持する」などと「代案」を言える政治家はほとんどいないし、共和党全体の方針も定まっていません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-キーウに「最も寒く暗い冬」、ロシアの攻撃で停

ビジネス

粉ミルク自主回収、仏ダノンにも拡大 原料から毒素検

ワールド

ガザ攻撃で記者3人死亡、イスラエル「ハマス関連」と

ワールド

ブラジル大統領選、ルラ氏支持48% 前大統領長男が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story