ニュース速報

ワールド

アングル:米富裕層、バイデン氏の増税恐れ遺産相続計画を変更

2020年10月17日(土)08時05分

 米国の富裕層は、大統領選で民主党のバイデン前副大統領(写真)が勝利して増税する可能性を恐れ、年末までに遺産相続計画を変更しようと奔走している。写真はアリゾナ州フェニックスで8日撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

[9日 ロイター] - 米国の富裕層は、大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利して増税する可能性を恐れ、年末までに遺産相続計画を変更しようと奔走している。

最も懸念しているのは、民主党が大統領選を制し、上下両院でも過半数を確保する「ブルー・ウェーブ」となるケースだ。この場合、バイデン氏は抜本的な税制改革を提案し、議会を通過させる力を得る。

富裕層が特に神経をとがらせているのは、1158万ドルの相続税非課税枠が2025年の期限切れ前に引き下げられる事態だ。

民主党の綱領によると、同党は相続税を「歴史上の標準」に引き上げる方針。ファイナンシャルアドバイザー(FA)によれば、相続税の非課税枠は549万ドルに引き下げられる可能性がある。これはトランプ大統領が2017年、企業と富裕層への恩恵を含んだ税制改革法案に署名する前の水準だ。

大統領選の結果は不透明で、税制改革が提案されたとしても議会を通過するかどうかは明らかではない。複雑で審議に時間を要する改革となる可能性もある。だが世論調査でバイデン氏の支持率が上昇しているため、富裕層は来年の税負担増大を回避しようと、信託の設定や既存信託の変更を急いでいる。

富裕層向けの財産管理を専門とするニューヨーク州の弁護士、トニ・アン・クルーゼ氏は「1158万ドル問題とは『相続税の非課税枠がどうなるか』だ」と指摘。「大統領選で誰が勝利するか、上院と下院でどの党が多数派となるかは、わからない。これらの要因すべてが、非課税枠の行方に影響するだろう」と話した。

バイデン氏のウェブサイトによると、同氏は有給の介護休暇や療養休暇の財源を確保するため「相続税を2009年の水準に戻す」方針も示している。

バイデン氏の計画には、長期キャピタルゲインへの課税の引き上げも盛り込まれている。それによると、所得が100万ドルを超える納税者は長期キャピタルゲインに39.6%の税率が適用される。現在は所得44万1450ドル以上の個人の税率20%を上限に、税率が段階的に設定されている。

バイデン陣営の広報担当アンドリュー・ベイツ氏は声明で、バイデン氏は生活が苦しい人に恩恵をもたらす税制改革を目指していると説明。「ジョー・バイデンはこの国の背骨、すなわち中間層を立て直すために出馬している。ただの資産ではなく、勤労に報いる経済にすることによってだ」と述べた。

FAの話では、遺産相続計画の変更依頼は、世論調査でバイデン氏の支持率がトランプ氏を上回った6月に大きく増えた。

ニューヨーク州を拠点とする不動産鑑定会社ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー最高経営責任者(CEO)は、同社では税務関連の業務が通常の3倍に増えたと話した。「当社は現在、贈与税と相続税の算定依頼が殺到している」

同州のフィリップ・マイケルズ弁護士はここ数カ月で、遺産相続計画の変更を依頼する富裕層顧客が15人程度増えた。

ニューヨークの金融助言会社ロックフェラー・キャピタル・マネジメントのシニア資産ストラテジスト、ジョー・ロバーツ氏は、顧客は現在の制度が急転換し、抜本的に見直されることを心配していると話した。

(Suzanne Barlyn記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7、一方的措置でなく共通の解決策を模索する必要=

ビジネス

米当局と緊密に連携し「適切に対応」、今夕の円急騰に

ワールド

ウクライナ第2の都市ハルキウに攻撃、広範囲に停電 

ビジネス

ECB、ロシアの軍事的ショックに備える必要=リトア
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中