ニュース速報

ワールド

最後の香港総督パッテン氏、中国主席を批判「新冷戦引き起こす」

2020年06月01日(月)07時49分

 英統治時代最後の香港総督、クリス・パッテン氏は5月30日、ロイターとのインタビューで、中国の習近平国家主席は共産党の置かれた立場に非常に神経質になっているとし、そのために新たな冷戦を引き起こすリスクを冒し、国際金融ハブとしての香港の地位を危うくしていると語った。2017年9月19日、香港で撮影(2020年 ロイター/Bobby Yip)

Guy Faulconbridge

[ロンドン 30日 ロイター] - 英統治時代最後の香港総督、クリス・パッテン氏は30日、ロイターとのインタビューで、中国の習近平国家主席は共産党の置かれた立場に非常に神経質になっているとし、そのために新たな冷戦を引き起こすリスクを冒し、国際金融ハブとしての香港の地位を危うくしていると語った。

パッテン氏は、習主席の「卑しい弾圧」によって、外国からの資金を中国本土へ大量に送り込んでいる香港から、資本と人々が流出する恐れがあると指摘。西側諸国は習主席に対する甘い認識を捨てるべきだと述べた。

「我々は新たな冷戦を望んでいなかったが、習主席自身は望んでいるようだ。その事実に反応しなくてはならなかった段階を、とっくに過ぎてしまった」と、パッテン氏は述べた。

パッテン氏は習主席について、中国における共産党の立場に「神経質」になった独裁者を演じていると指摘。新型コロナウイルスへの初期対応を批判され、米国との通商問題で経済的に影響を受けたためとした。

「習氏が香港、台湾、その他の問題についてナショナリズムをあおっている理由の1つは、中国の共産党の立場について、中国政府関係者の中で誰よりも共産党の立場を気にしているからだ」と語った。

ロイターはロンドンの在英中国大使館にコメントを求めたが、回答を得られていない。

76歳になるパッテン氏は1997年、150年以上に及ぶ英統治が終った香港で英国旗が降ろされるの見守った。

英中は1984年の共同声明で、返還後も香港の自治を保障する「一国二制度」を取り決めた。だが、昨年から香港では中国政府に対する大規模な抗議活動が続いている。

中国の国会に当たる全国人民代表大会は28日、扇動や暴動、外国からの干渉を取り締まる法律を香港に導入することを決めた。

パッテン氏は、「『一国二制度』が香港に保障するものを習氏は嫌っている」と述べた。「彼が望んでいるのは、香港を叩き潰すことだ」

さらにパッテン氏は、習主席の行動がアジアの金融ハブとしての香港の地位を脅かしていると指摘。「香港が自由な社会であり続けられるかというだけでなく、アジアにおける主要な金融ハブとして機能し続けられるかとうか、大きな疑問符がつく」と語った。

「多くの人々が香港を去ろうとするだろう」とパッテン氏は述べ、資本も流出する恐れがあると付け加えた。 その上で、「これから数カ月、かなり荒れそうだ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者32人に、子ども14人犠牲 

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中