ニュース速報

ワールド

WHO、新型コロナ対応検証へ 中国は20億ドル拠出表明

2020年05月19日(火)09時34分

 5月18日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの感染拡大に対する国際的な対応を巡る独立した検証をできるだけ早期に開始すると表明した。写真はジュネーブのWHO本部(2020年 ロイター/Denis Balibouse)

[ジュネーブ 18日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)は18日、新型コロナウイルスの感染拡大に対する国際的な対応を巡る独立した検証をできるだけ早期に開始すると表明した。中国は流行終息後の中立的な検証実施を支持する考えを示し、今後2年間で20億ドルを拠出する方針も明らかにした。

ただ、アザー米厚生長官は、WHOの「失敗」を主因に、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)は「制御不能に陥った」と非難。中国を名指ししなかったものの、「少なくとも加盟国の1つが新型コロナ発生の隠蔽(いんぺい)を試みたようだ」と述べた。

トランプ米大統領はホワイトハウスでのイベントで記者団に対し、WHOの新型コロナ対応について「ひどい仕事をした」と批判し、米国の資金拠出について近く決定すると述べた。

大統領は「米国の年間拠出額は4億5000万ドルだが、中国は3800万ドルだ。WHOは中国の操り人形だ」と述べた。

トランプ氏は4月、WHOを「中国中心主義」と非難し、資金拠出を少なくとも一時的に停止すると表明した。

WHOのテドロス事務局長はテレビ会議方式で行われた年次総会で、新型コロナの感染拡大について「早い段階から頻繁に警鐘を鳴らした」と述べ、WHOの対応を擁護した。

その上で、「なるべく早く適切な時期」に独立した検証を開始し、将来のための提言を行うと表明。「すべての国、すべての組織が自らの対応を検証し、教訓を学ばなければならない」とし、調査はすべての当事者を対象に誠実に行う必要があると述べた。

中国はこれまで、ウイルスの起源や感染拡大を巡る調査を求める声に反発してきたが、習近平国家主席は年次総会で、感染が世界的に制御された段階で、国際的な対応を巡り包括的な検証を行うことを支持する考えを示した。ただ「検証はWHO主導の下、科学的かつ専門的な態度で臨む必要があり、客観性や公平性の原則が伴わねばならない」と強調した。

習主席は中国の初動対応について、透明性を持って迅速に情報を共有したと主張した。主に途上国のコロナ対策を支援するため向こう2年間で20億ドルを拠出する方針も示した。これは昨年のWHO予算に匹敵する額で、トランプ政権が凍結した年間約4億ドル分を補完するのに十分な額だ。

米国家安全保障会議(NSC)の報道官はこれについて、中国政府の対応の失敗を巡り責任を追及する声が高まる中、注意をそらそうとしていると批判した。

アザー厚生長官は年次総会で、「世界に必要な情報を入手する上で、WHOは失敗し、多くの命を犠牲にした」と指摘。「加盟国が誠意に欠く行動をした際に、WHOは情報共有と透明性という中核的な使命を果たせなかった。このようなことは二度と起きてはならない」と語った。

また「WHOによる対応の全側面について独立した検証」を行うことを米国は支持すると表明し、中国の対応も「対象にすべき」との立場を示した。

アザー長官の後に発言した中国国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は、中国政府は感染状況の発表やウイルスの遺伝子配列の共有などを迅速かつ透明性のある形で行ってきたと述べ、各国に対し「うわさや非難、差別に抵抗」するよう求めた。

新型コロナの起源と感染拡大に関する独立した調査の実施を求めて欧州連合(EU)とオーストラリアがまとめた決議案には、WHO加盟国から採択にほぼ十分な支持が集まったもようだ。決議案は19日に採決にかけられる見通し。

ドイツのシュパーン保健相は、WHOは「外部の干渉からの独立性を高める」とともに、「主導・調整役」としての役割を強化する必要があると指摘した。

オーストラリアのハント保健相は、計画されている検証では、WHOの査察権限の強化や、野生生物・生鮮市場がもたらす世界的な脅威への対策などが検討される可能性があると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中