ニュース速報

ワールド

トルコとロシア、シリア北部のクルド人勢力退去で合意 

2019年10月23日(水)09時35分

トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が22日会談し、トルコが展開するシリア北部での軍事作戦について協議した。ソチで撮影(2019年 ロイター/SPUTNIK)

[ソチ(ロシア)/アンカラ 22日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領は22日、ロシア南部ソチで会談し、ロシア軍とシリア軍がシリア北東部のクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」をトルコ国境から30キロシリア側に離れた地点まで退去させ、退去後の「安全地帯」をトルコとロシアが共同で警備することで合意した。

一方、米国とトルコが先に合意したシリア北部の停戦合意はこの日1900GMT(日本時間23日午前4時)に期限を迎えた。トランプ米大統領が2週間前にシリア北部からの米軍撤退を発表し、その後すぐにトルコが同地域でクルド人勢力の掃討を掲げて軍事作戦を開始するなど、シリアの情勢は目まぐるしく変化している。

トルコとロシアの合意によると、23日GMT0900(日本時間23日午後6時)にロシア軍警察とシリアの国境警備隊がシリア北部に入り、YPGの退去を始める。YPGの人員と武器などの移動に約6日間かかるとしている。

6日後からは、トルコ国境から10キロ圏内の地域をトルコとロシア軍が共同で警備し、トルコにとどまるシリア難民の安全な帰還についても両国が取り組むことで合意した。

シリアとトルコの国境沿い地帯は何年もの間、米軍がクルド人勢力の協力を得て警備してきたが、今後はこれに代わり、ロシアを後ろ盾とするシリアのアサド政権軍が再び勢力を得ることになる。

エルドアン大統領はプーチン大統領との共同記者会見で「今回の合意は、YPGなどのテロ組織をこの地域から撤退させ、シリア難民の安全な帰還を円滑に進めることを目的としている」とし、「こうした取り組みはシリアの領土保全と政治的な一体性を保証するものとなる」と述べた。

プーチン大統領は今回の合意は「シリアとトルコの国境での極めて緊張した状態の解消に向け、非常に重要」と強調した。

トルコとロシアの合意では、YPGに退去を迫る国境沿い地帯の範囲は、米国とトルコとの停戦合意の対象範囲の3倍以上となった。

一方、前週に停戦合意の交渉に当たったペンス米副大統領は、YPGを主体とする「シリア民主軍(SDF)」の司令官から書簡で、合意した地帯から撤退したとの通知を受けたと明らかにした。報道官によると、ペンス氏はYPGの撤退などの合意内容が履行されたと見なしているという。

SDFの高官は、停戦で合意した地帯からSDFが撤退したことを司令官が確認したと述べた。

プーチン大統領との会談を前に、エルドアン大統領はシリア北東部の国境沿いの地帯に何百人ものクルド人武装勢力が撤退せずに残っていると述べていた。

トルコ民放NTVによると、エルドアン氏はプーチン大統領との会談後も、米国が停戦合意の「約束を完全に果たしていない」と不満を述べていた。

トルコはシリアとの国境沿い440キロに安全地帯を設置することを求めてきた。

*内容を更新しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東証、ニデックを特別注意銘柄に28日指定 内部管理

ビジネス

HSBC、第3四半期に引当金11億ドル計上へ マド

ビジネス

日本国債の大規模入れ替え計画せず、金利上昇で含み損

ビジネス

米FRB議長人事、年内に決定する可能性=トランプ大
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中